隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい



あれは、私が7歳だった小学2年生の夏のある日のこと。


この日私は友達と二人で、家の近所の川のほとりで水遊びをしていた。


「あっ」


突然吹きつけた風に煽られて、被っていた麦わら帽子がふわりと飛んでいく。


「ま、待って!」


そのままころころと転がって、帽子は川へと吹き飛ばされてしまった。


まだ幼かったこの当時『ひとりで川に入ったら絶対にダメよ』と、お母さんに言われていたけれど。


帽子を取りに行くことで頭がいっぱいだった私は、そんなことなどすっかり忘れて、ひとり川の中へと入った。


だけど帽子を追いかけている途中で急に川の深い所にはまってしまい、私はそのまま流されてしまった。


泳ごうとするも、川の流れが早くて思うようにいかない。


「た、助けて……っ」


呼吸が上手くできない。


水もどんどん口の中に入ってきて苦しい。


ああ、もしかしたら私はこのまま溺れて死ぬのかなと思った。