ふー。危ない、危ない。
「おー、すごい。何か、さっそくボディーガードっぽいね?」
からかうような宇山くんの声が聞こえて、ハッとする。
バイクから守るためとはいえ、彼をいきなり抱き寄せるなんて……!
急に恥ずかしくなった私は、宇山くんの腰にまわしていた手を慌てて離した。
「あっ、危ないから。宇山くんはこっち!」
そう言って私は、車道側へと移動した。
「ちょっと、何やってるんだよ」
そっと腰に回された手に、心臓がドキッと音を立てる。
「羽生さんは女の子なんだから。フツーは、俺がこっちだろ?」
宇山くんはさりげなく、私を歩道側に誘導した。
女の子……やばい。初めて男の子に、女の子扱いされたかもしれない。
「でも、これじゃあ私がいる意味なくない?」
「そんなことない。昨日までは一人で通学してたから。羽生さんが隣にいてくれるだけで楽しいし」
「あ、ありがとう。宇山くん……」
ついお礼を言ってしまったけど。こういうときって、どんな反応をすれば良いの?
「ねぇ。その“宇山くん”って呼び方、やめにしない?」
「え?」
「昨日から俺と君は、偽りでも恋人同士なんだから。お互いのことは、名前で呼び合おう」



