隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい



千春ちゃんと話しながら歩いていると、2年A組の教室に到着。


「おはよう、宇山くん」


私は教卓に課題のノートを置くと、自分の席に行く途中、近くの席の宇山くんに声をかけた。


先日、学校に遅刻した私を助けてくれた男の子・宇山彗くんは、私と同じ2年生でクラスメイトだということがあのあと分かった。


「おはよう、羽生さん」


チラッと私を見ると、宇山くんはすぐに文庫本へと視線を戻す。


宇山くんは基本休み時間はいつも自分の席に座り、こうして一人静かに読書してることが多い。


「おーい、宇山。お前、何読んでんだよ?」

「……太宰治の人間失格」


話しかけてきたクラスメイトの男子に、ニコリともせず無表情で答える宇山くん。


「へ、へぇー。読書の邪魔して悪かったな」


男子は苦笑いを浮かべると、そそくさと逃げるように離れていく。


「宇山くんって、いつも何考えてるのか分からないよね」


その様子を見ていた千春ちゃんが、口を開く。


「前髪も長くて目にかかってて、表情とかも分かりづらいし」


確かに。宇山くんは教室ではほとんど話さないし、今みたいに無表情なことが多い。


私を裏門まで連れて行ってくれたときは、口数もあって笑顔も見せてくれていたけど。


あのときと今、どっちが本当の宇山くんなんだろう?