「1限目は羽生のクラスの担当なんだが、前回の授業で回収した課題のノートを返すから、教室まで運んでおいてくれないか?」
そう言って数学の先生は、私にクラスメイト全員分のノートを渡してきた。
う。教科書の入ったスクールバッグを肩にかけた状態で、クラス全員分のノートも運ぶとなると、さすがにちょっと重いけど……。
「先生、用事があるから。悪いけど頼んだぞ」
「は、はい!」
早く学校に馴染みたくて、クラスメイトや先生のお手伝いを率先してやってたら、こうしてたまに雑用を頼まれるようになった。
でも、人から頼りにされるとやっぱり嬉しいから。頑張ろう!
私は、ノートを胸の前に抱えて歩く。
「菜乃花ちゃん、わたしも手伝うよ」
「ありがとう」
千春ちゃんが、課題のノートを半分取ってくれた。
「でも、菜乃花ちゃんって小柄なほうだけど力は結構あるよね? 今もふらついたりせずに、クラス全員分のノートを軽々と持ってたし。この前も、わたしを横抱きにして保健室まで運んでくれて」
感心したように話す千春ちゃんに、私の心臓がドキッと跳ねる。



