「長男は生まれつき心臓が悪くて、20歳まで生きられないかもしれないと、医者から言われていたんだ。亡くなった当時も心臓の機能低下がかなり進んでいて、あと数ヶ月の命だろうと言われていたんだ」
「だからあの当時、親である私たちもある程度の覚悟はできていたのよ」
ご両親は、そう言って下さるけど。
あのとき私が溺れたりしなければ、もしかしたら葵くんは1日でも長く生きられたかもしれないのに。
「私は、人助けをした息子が誇りだ。人が川で溺れているのを見て見ぬフリをするような人間ではなく、優しい息子で本当に良かったと思ってるよ」
「そうね。夫の言うとおりよ。だから、菜乃花さん。どうか気にしないで」
お二人が、私に向かって微笑んでくれる。
「ただ、これだけは言わせてくれる?」
彗くんのお母さんが、私を真剣な眼差しで見つめる。
「これは、あの子の親としての願いだけど。できることなら……長男のことはこれからもずっと忘れないであげて欲しいの」
「はい。もちろんです。葵くんに助けてもらった恩は、一生忘れません」
「ありがとう、菜乃花さん」
少し涙ぐむお母さんを見て、私の視界もじわりとゆがんだ。



