隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい



フロアの真ん中で抱き合ったままの私たちを、周りがざわざわと注目し始めた。


会話は聞こえていないはずなのに、歓声と拍手が沸き起こる。


その音で、私はようやく我に返った。


し、しまった。途中からつい、彗くんと二人だけの世界に入ってしまっていたけど。


ここは、ホテルのパーティー会場だったんだ。


そのことに気づいた瞬間、頬が沸騰したように熱くなり、私は慌てて彗くんから離れた。


「彗、菜乃花さん」


ちょうどそのとき、私たちに声をかけてきた人が。


「父さん、母さん!」


それは、彗くんのご両親だった。


「先ほどのふたりのダンス、良かったよ」


彗くんのお父さんに褒めてもらい、私たちは二人そろって頭を下げる。


「それと、菜乃花さん。たった今、蓮から長男の……葵の話を聞いたよ」


お父さんの口から葵くんの名前が飛び出し、心臓がドキリと跳ねる。


彗くんのお父さんの隣には、いつの間にか蓮くんの姿もあった。


「まさか彗の彼女であるあなたが、葵が川で助けた女の子だったなんて……」


お父さんの瞳に、影が差す。