「いや。お礼を言うのは、俺のほうだよ」
「え?」
「俺、菜乃花と出会えて良かった。菜乃花が俺のボディーガードになってくれて、本当に良かった」
「!」
彗くんの言葉に、目頭が熱くなる。
彗くんにそんなことを言われたら、泣いちゃいそうだよ。
まばゆいシャンデリアの下。
私は目から涙が溢れそうになるのを必死に堪えながら、流れるワルツに合わせて一歩一歩丁寧に踏みしめる。
彗くんと二人で踊るこの時間が、ずっと続いて欲しい。
音楽が、永遠に止まらないで欲しい。
だけど、物事には必ず終わりがあることを私は知っているから。
私は、彗くんと踊れる今この瞬間をしっかりと心に刻んだ。



