周りにいる人たちが、男女一人ずつペアとなって、フロアの中央へと集まっていく。
「さあ。俺たちも行こう」
彗くんは一歩前に出ると、こちらに手を差し出した。
「……プリンセス。俺と踊っていただけますか?」
甘く注がれる眼差しに、思わず鼓動が跳ねる。
ここまで来たら、もうあとには引けない。
『大丈夫。俺がリードするから』
私は、さっきの彗くんの言葉を信じてみようと思った。
「は、はいっ」
ドキドキしながら手を重ねると、そっと彼のほうに引き寄せられた。
そのままフロアの中心までエスコートされると、緊張が一気に押し寄せてくる。
「菜乃花。今日の君は本当に素敵だから。自信を持って」
彗くんが耳元で、私にだけ聞こえるように囁く。
「他のことは何も考えずに、菜乃花は俺だけを見てて」
力強く握られた手は、私に安心感を与えてくれる。
目を見て頷くと、彗くんは微笑み……私をリードしながら踊り始めた。



