「それじゃあ、彗。このあとの菜乃花さんとのダンス、楽しみにしているぞ」
えっ。ダンス?
お父さんはにこやかに彗くんの肩をポンと叩くと、足早に歩いて行った。
「あの、彗くん。お父さんが今話していた、ダンスっていうのは……」
「ああ、悪い。色々あって菜乃花に話しそびれていたけど、今日のパーティーはダンスパーティーなんだよ」
ええっ。ダ、ダンスパーティー!?
それじゃあ、さっきのおじさんが話してた『例のアレ』っていうのは、ダンスのことだったんだ!
「いや〜。今日は三池さんのご子息が、お付き合いしている女性と初めてダンスを披露するらしいから。楽しみですなあ」
「そうですねえ」
招待客の話し声が耳に入り、ダンス未経験の私は自分の顔がサッと青ざめるのが分かった。
最後の最後に、こんなとんでもないミッションが残っていたなんて……!
「あの、彗くん……わ、私、ダンスなんて今まで一度も踊ったことがないから、無理だよ!」
「大丈夫。俺がリードするから」
小声で訴える私に、彗くんが自信満々に微笑んだそのとき。
ちょうどダンスタイムの時間になったようで、会場内には優雅なワルツが流れ始めた。



