「髪飾りなんて、またいくらでも買ってプレゼントするのに」
「他のじゃダメなの。私は、この髪飾りが良かったの」
「え?」
「この髪飾りは、彗くんから初めてもらった物だから。これがなくなったら、あのときの嬉しかった気持ちや、今までの彗くんとの思い出まで消えてしまうようで嫌だったの」
「菜乃花……」
私は、髪飾りを胸の前でギュッと抱きしめる。
「だからって、無茶なことをして彗くんに迷惑をかけて……本当にごめんなさい」
「いや、俺のほうこそごめん。そもそも俺が菜乃花に、強く言える立場じゃないのにな」
彗くんが、私から視線をそらす。
あれ。彗くん、どうしたんだろう?
何だか様子が変というか。いつもよりも元気がないような?
「あのさ、菜乃花……髪飾りのことなんだけど、ごめん」
彗くんが、私に向かってガバッと頭を下げた。
「えっ、でも……どうして彗くんが謝るの? 彗くんは何も悪くないでしょ?」
「実は……菜乃花の髪飾りを伊集院に盗ませたのは、蓮なんだよ」
え!?



