「彗くん!」
「菜乃花、起きてて大丈夫なのか?」
彗くんが心配そうな顔で、ベッドのそばの丸椅子に腰をおろす。
「うん。いつも通りだよ」
「そっか。良かった……」
私が微笑んでみせると、暗かった彗くんの表情がほんの少し明るくなった。
「そういえば、彗くんが私のことを助けてくれたんだよね? ありがとう」
「いや……。つーか、菜乃花。水が苦手だって言ってたのに、どうしてプールに入るなんて無茶したんだよ? 溺れて……下手したら、死んでたかもしれないんだぞ!?」
「っ!」
珍しく彗くんの語気が強くて、肩がビクッと跳ねた。
「ごっ、ごめん。水は怖かったけど、プールに浮いていた髪飾りを、どうしても取りに行きたくて」
枕元に置かれていた黄色い花の髪飾りを、私は手に取る。
少し汚れてしまってるけど、髪飾りは無事だ。



