弟の蓮は生まれてすぐ、子宝に恵まれなかった俺たちの母の実家である速水家に……。母の兄夫婦の元に、養子に出されたんだ。
「うう。ひどいよ、彗……っ」
目元に手を当て、声を震わせる蓮。
「……泣き真似をしたって、俺には通用しないから。いい加減、観念しろよ蓮」
「くっ」
「目撃者も何人かいるし、俺は伊集院本人からも全部聞いたんだよ。蓮に頼まれてやったって」
「……チッ。あの女……」
冷たい声音に、冷めた視線。
忌々しそうに舌打ちをする蓮は、いつもの可愛らしさの欠片もない。
「ああ、そうだよ。僕が伊集院さんに頼んだんだ。そして、彼女に盗ってもらった髪飾りを、学校のプールに投げ捨てた」
投げ捨てたって……。
︎︎︎︎︎︎
ふつふつと、言いようのない怒りが込み上げてくる。
「どうしてだよ? なんでお前がそんなひどいことを……。蓮も菜乃花のことを、良い子だなって思ってたんじゃなかったのかよ?!」
──『菜乃花ちゃん、僕と一緒に走って!』
体育祭の借り物競争のとき、蓮は一番に菜乃花を指名したり。彼女に優しく接したり。
少なくとも俺には、蓮が菜乃花に好意を抱いているように見えた。
それなのに……。



