「あの、宇山くん……いや、三池くん、ちょっと良いですか?」


放課後。菜乃花のなくした髪飾りを探して中庭を歩いていると、知らない女子に声をかけられた。


「何か用?」


声をかけられた以上は知らんぷりすることもできず、俺は聞き返す。


聞かなくても、緊張した面持ちの彼女を見ていれば、だいたい察しはつくけど。


「あの、私……あなたのことが好きなんです。付き合ってください!」

「……」


目の前で頬を赤らめる女子を、俺は冷めた目で見つめる。


「ごめん。俺、いま付き合ってる子がいるから」

「そう、ですよね」


涙目になりながら、彼女は走っていった。


「はぁ……」


もう何度目か分からない告白に、ため息がこぼれる。


素性を明かしてからというもの、俺はなぜか学校で異様にモテるようになった。


身分を隠していた頃から、俺には菜乃花という彼女がいると公になっていたはずなのに。


どうして、俺に告白してくるのだろう。