隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい



『プールの建物の近くで、伊集院さんが黄色い花のバレッタを誰かに渡していた』


水泳部の堀田さんからその話を聞いた私は、屋外プールのある建物へ向かって走り出す。


やっぱり……あのとき伊集院さんが、私の髪飾りを盗ったんだ。


それにしても、伊集院さんは髪飾りを誰に渡していたんだろう?


堀田さんは、相手の顔はよく見えなかったって言ってたけど……。


靴を履き替えて昇降口から外に出ると、雨のにおいがした。


今はまだ梅雨の真っ只中だから、もしかしたらまたひと雨あるかもしれない。


「急がなきゃ」


私がプールのある建物の階段をのぼって中に入ると、水泳部はすでに練習が終わったのか無人だった。


もしかしたら、伊集院さんたちがまだこの辺りにいるかも? と思って来てみたけど。


さすがにもう、ここにはいないか。


そう思い歩き出そうとしたとき、25メートルプールの真ん中辺りに、何かがぷかぷかと浮いているのが見えた。


「あれって……」


目を凝らしてみて、私はハッとする。