保健室で膝の手当をしてもらってから教室に戻ると、私の席の近くに伊集院さんがいるのが見えた。
「えっ。伊集院さん……?」
私の声に気づいたのか、伊集院さんは慌てた様子でその場から走り去った。
何なんだろう?
疑問に思いながらも、私は自分の席に向かう。
「あっ、菜乃花ちゃん! 次の家庭科は、教室じゃなく家庭科室でするんだって」
「そうなの!?」
「うん。急遽変更になったみたいで、さっき家庭科の先生が教室まで伝えに来たんだよ」
「そうだったんだ。ありがとう」
千春ちゃんに教えてもらった私は、大急ぎで家庭科の授業の準備をする。
「予鈴が鳴るまで、あと5分だよ」
「菜乃花、急ごう!」
「うん」
この日、日直の私は、教科書やノートを持つと、教室の戸締りをして彗くんと千春ちゃんと一緒に駆け足で家庭科室へと向かった。