「どこかに王子様落ちてないかなぁー」


中学生になったら恋をして、人生初の彼氏を作る。そう夢見て、早いもので1年。


私・羽生(はぶ) 菜乃花(なのか)は、彼氏どころか男の子の友達すらできないまま、中学1年生の春休みを迎えていた。


私は今、3歳年上のいとこで高校1年生の風音(かざね)ちゃんと一緒に、ショッピングモールに来ている。


映画を観たあとクレープを食べようという話になり、二人でお店に向かって歩いているところだ。


「ふふっ。どこかに王子様が落ちてないかなって。菜乃花ったら、ドラマや漫画の見すぎだよ〜」

「えー。でも、そういうのって憧れない?」

「まぁ、確かに憧れなくもないけど……ごめん、菜乃花。あたし、ちょっと電話出てくる!」

「分かった」


風音ちゃんが電話だと言ってその場を離れ、私がお店の前でひとりで待っていると。


同世代くらいの金髪の男の人が、こちらに近づいてきた。


「君、可愛いね。もしひとりなら、俺と遊ばない?」


え。これって、もしかしてナンパ?!


「あ、あの。私、いとこを待ってるので……」


そう言うも、男の人に手首をガシッと掴まれてしまった。


「は、離して下さい!」

「ねぇ。ちょっと、そこのカフェで話そうよ」


私が離してと言っても、なかなか手を離してくれない彼。


ど、どうしよう……。