ルゼと正式に付き合うようになったジェミーは、王宮で行われるガーデンパーティーにも参加するようになっていた。本日はそこにクラフトと婚約したセニアも同席しており、仲良し女子がふたり揃えば口に出るのはもっぱら愚痴だ。

(ふう、やっぱり平民上がりの私に妃教育はなかなかの難関だわ。テーブルマナーひとつとっても基本的なルールが身についてないのよ。ああん、もう食べ終わったらナイフとフォークをこうしろだの、お話は席の右側の人とだの、スープは手前から奥に掬えだの、もううんざりっ! 私はね、美味しくご飯を食べたいだけなのよ!)
(わかるわかる。セニアもいろいろ大変ねぇ。今度優しくて教え方のうまいマナー講師を母上から紹介してもらったげるから。一緒に勉強しましょ)
(お願い! あれじゃあ、ロイヤルな方たちには下々の気持ちがわからないわけだわ。失敗したら、もう一度ってぴしゃりと繰り返すだけで、なにが間違ったかも教えてもくれない。グリーンピースひとつ分の角度の間違い探しを何度もやらされるのは懲り懲りなの!)

 おおっとぉ……ティースプーンを力づくで曲げようとするんじゃありません。

 悲嘆にくれるセニアの背中を撫でて宥めてやりつつ、これもまた未来の自分の姿かもしれぬと胃もたれするジェミー。そこへ、談笑しながらルゼとクラフトが戻ってきた。