ジェミーが胡散臭そうに見つめる中、彼女は自信満々に手のひらをばっと突き出すと、器用にこちらに見えるようある文字を描いて見せた。すなわち、“人”と――。

「人、という意味の文字だそうで、それをこう――」
「吞み込むんでしょ。迷信だし、リラックスしてどうすんの」
「そ、そんな⁉」

 がくりと膝を崩しかけたミリィだったが、なんとかそこで踏みとどまる。
 
「さすが博識のお嬢様。そ、それでは……これはどうです! 肩やこめかみのとあるスポットを押せば、頭部の血行が促進されて気持ちがすっきり! なんならわたしが直接マッサージを――」
「一緒に仕事してる人の手前、そんなことできないでしょ。却下」

 すげなくジェミーが腕を振ると、どうやら種切れのようで、ミリィはその場に崩れ落ちる。

「……ううぅ、申し訳ございません~。わたくしめが役立たずのぼんくらせいで~」
「はいはい、よく頑張った」