どこまで言っても真剣になりきれない侍女の強張る口元を睨みつけながら、ジェミーは頬杖を突いて浮かない表情で呟いた。

「真面目な相談なの。なんだか最近、寝ても覚めてもルゼのことばっかり頭に浮かんじゃって。今彼ってば、どうしているのかしら、とか。どんなところに連れて行ってあげたら喜んでくれるかな、とか……」
「お、御嬢様も立派に淑女への階段を昇られているのですねぇ。えほっ、おほん」

 感慨深げにミリィは同意したが、視線だけは頑なにジェミーから背け、盛んに咳払いして乱れた呼吸を整えている。
 それは見ないふりをしてジェミーは続けた。

「仕事中にぼんやりしちゃって人の話を聞けてないこともあるしさぁ、これじゃいけないと思うのよ。スパッと意識を切り替えられる、なにかいい方法あったりしないかしら?」
「お仕事に集中できる方法ですか~」

 ようやく精神が安定してきたか、口元に指をあてがい考えていたミリィは、やがてクワッと目を開く。

「であれば、御嬢様だけに、わたしがかつて母より聞いた、はるか遠くの異国から伝わる秘伝の方法をお教えしましょう!」
「本当に期待出来るの……?」