「「とにかく、南!!」」
「わっかりました~!」

 ビシッと鞭が叩かれ、ガララと車輪が回り出す。
 その頃には、後を追う参列者たちが悲喜交々に喚きながら、建物からわらわらと飛び出してきていた。それを尻目に。

「ひゃっほー! いっけー!」
「わわっ、あんまり抱き着かないで」

 馬車の中で思いっきりジェミーは快哉を上げ、しがみつかれたルゼが我に返って真っ赤になる。

「ひゃあああぁ~!? ななななんだか、皆すんごく追いかけてきてますけど――? 御嬢様いったいなにをやらかされたんですかぁ~!?」

 そんなこんなで……。
 行先は、青ざめ必死に鞭を振るうミリィ任せ。

 雲ひとつない晴れ間に似合わない気の毒な叫び声とともに。
 こうして、ジェミーとルゼの気まぐれな逃避行が幕を開けた――。