~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド

「幸運なことに、人を乗せた馬車はちょうどそこから動き出すところで、ふらふら様子のおかしいそれを目で追った僕は、いつの間にか必死に叫んでいたんです。『危ないぞ、壊れる!』って」
(それって)

 それを聞いてジェミーも、まだ鮮烈に記憶に残るトマト塗れになった当時を思い出し、恨みがましい視線を黒幕に突き刺した。だがデールはもう時効だというように肩を竦めてみせただけで、そのままルゼの話は続く。

「後でその持ち主が助かったと聞き、余計だったかと思う反面、ものすごく安心しました。同時に――見知らぬ誰かが命を落とすくらいのことで罪悪感を抱えきれず、引き返した――そんな優柔不断な自分が嫌で仕方なかった」
(知らなかったな。ルゼが自分のこと、そんな風に思ってたなんて)

 ジェミーはてっきり、彼が迷うことなく冷静に、いつも通りの心持ちで危険を退けてくれたのだと思っていたが、ずいぶんと大きな葛藤が彼の中ではあったらしい。

 だが、おかげでジェミーはこうして怪我もせずにこの場に立っていられる。その感謝を示すよう、彼女が背中に手を添えると、ルゼは心配ないよというように微笑みかけ、顔を戻す。