細かい部分を顔を近づけてまじまじと確認していたミリィが、ぱしんと手を叩き、ジェミーは閉じていた目を開いた。

「どうどう? おお~、結構かわいくなったじゃない。さすが私」

 すると鏡に見えたのは、紛うことなき儚げな美少女の姿。

 きつい眼差しや、人に恐ろしいイメージを与えがちな口角の印象も、化粧のおかげで見違えるようにに緩和されている。これならば、恋物語のサブヒロイン役くらいは務まりそうかも。

「御嬢様ももともとのお顔立ちはとても美しいですから。ちょっと気合を入れてやれば、まあ、こんなものですね」
「お~、ミリィやるぅ。そっち方面でも食べていけそう。でも――」

 自慢げに腕をぐっと曲げアピールするミリィの業前を、ジェミーは拍手で認めてやった。
 だがもちろん、彼女は本気で結婚に乗り気になっているわけではない。

「ここまでしっかりやることはなかったんじゃない? どうせぶち壊しにするつもりなんだし」
(御嬢様、声が大きいですよ~)