「まさか、地下にある食糧倉庫の戸棚の裏に、隠し扉などがあったとは」

 悔しげに壁に腕を叩きつけたのは、騎士団隊舎の取調室から戻ってきたガーフィールだ。
 貼り付けてあったレビエラ王国の国旗やタペストリーがいくつかバサバサ落ちて、悲しげにひしゃげたが、しかしそれだけでは彼の怒りは収まらない。

「くうぅぅぅっ。協力していた兵士たちはいずれも新参者。直接ではないが、クラフト殿下に買収されていたと考えられる。国を守る兵士として、あるまじきだっ! 恥ずかしいっ!」

 彼が身内の不明に怒号をまき散らすのを、ルゼは黙って聞いていた。
 その部屋には先刻助けに来てくれたウィリアムたちと、ペリエライツ家の者たちの姿もある。

 あの後、来た道を引き返し軟禁部屋にたどり着いた彼らは、無事人質たちを救出することができた。

 長時間監禁されていたせいで体力の落ちたガースルとコーネリアを連れ出すにはそれなりの時間がかかったが、幸い、クラフトの手の者から邪魔されることもなくすんなりと外に出ることができた。

「お手柄だったな、ルゼ君」
「いいえ。お役に立ててよかったです」