「くっ……」

 ゆっくりと近づく第二王子に反応して、ミリィがジェミーを庇うように前に出た。
 だが、クラフトはそれを一笑に付す。

「ミリィ君、だったかな。勘違いはやめてくれたまえ。私はこんなところで手荒な真似をするつもりはないよ。ジェミーと大切な話をするために来たんだ」
「謀りましたね」

 ジェミーがクラフトと挟むように立つジェイクにきつい視線を向けると、彼はおどけた様子で誠意のない謝罪を見せた。

「すみませんね。あなたと敵対したくないというのは本心ですが、第二王子殿下のご命令とあれば知らせぬわけには参りませんで」

 つまり、ジェミーがここに来ることも予め彼らは確信していたのだ。
 長い待ち時間はクラフトに連絡をつけるためだったのだと今更ながらに理解する。とすれば、結局ジェミーは彼らの手のひらの上で踊らされていたということになる。

 もっとも、ジェミーも無策でここに来たわけではない。