どうせ邸内で生活する人間が減ったため、政務に関わりのない人間は多少の手空きが出ている。
　そして、公爵家に勤める使用人はいずれも、身元も能力もしっかりとした、人をもてなすエキスパートたち。彼女たちなら、従業員として働くのに申し分ない。

　一番の問題は、店舗で提供するメニューと、それを調理する人員だったが、そこは帝国でのジェミーの、カレンベール・チョコレート・カンパニー、もといＣＣＣの名誉会長とたる立場を利用して、数人のパティシェを引き抜いてきた。

　皇帝も、いずれ帝国で提供し始めるチョコレート菓子の研究のためとジェミーが説明すれば、喜んで手を貸してくれた。もともとペリエライツ家にはいくら配っても消費しきれない大量のチョコレートが帝国から送られてくるのだし、消費するのにもちょうどいい。

　かくして――様々な人々の協力を得てジェミーズ・カフェは超特急で開店に漕ぎつけたというわけである。

　そしてチョコレートが帝国と周辺諸国で莫大な人気を博し始めたことで予想できた通り、それをどこよりもはやく提供し始めたジェミーズ・カフェは恐ろしいほどの人気を博した。

　おまけに通いつめればジェミーズ・ドロアーの限定商品まで手に入るときている。相乗効果で店舗の前には連日長蛇の列ができ、一組につき時間制限までつけなければいけない騒ぎとなった。