今頃ウィリアムには置き手紙で、今日ここに赴くことが伝割っているはずだ。
 この王都でさすがに人ひとりを、人力で疑われずに遠くまで運ぶのは困難だろう。商会本部を張っていれば、いかに姿を隠していようと、そこから外に出る馬車などに目星をつけることは可能なはず。
 そしてそれは自然と、ペリエライツ家の軟禁場所に彼らを導いてくれる。

 唯一の懸念があるとすれば……。

(くれぐれも、頼むから早まった真似だけはしてくれるなよ~、ジェミー)

 あの公爵令嬢の予測不能な行動力を考えれば、それだけですべてのお膳立てが覆ってしまうような気もする。
 そればっかりはルゼにはどうしようもない。
 できることは、すべての物事がうまく収まりますようにと祈るくらいのものなのだ。