「私、まだ落雷事故のショックから記憶が不確かでして。これまで皆様に高圧的な態度を取ってきたと聞いて反省しておりますの。これから、少し以前と違った部分が態度や言葉遣いに現れるかもしれませんが、どうかその辺りはご容赦いただければと思いますわ」
「そ、そうでしたの。わかりましたわ」「気にしないようにいたします」

 こう言っておけば、その内不審にも思わなくなるだろう。なんだかだんだんごまかすのに慣れてきたなあと思いつつ、他にも二、三知り合いの令嬢に挨拶しながら、もう少しで自分たちの教室にたどり着こうとしたところだった。

「きゃあっ!」

 横合いから弾かれるようにして、ひとりの少女がジェミーの足元に倒れ込んでくる。その少女がよろよろと顔を上げ、瞳がばっちり合った。

 柔らかそうなピンクブロンドの髪から覗く、同色のぱっちりとした瞳。

(セニア・エレマール!)

 それを見た途端、ジェミーの中の誰かが体をつき動かす。彼女は大きく手を振り上げると、そのやや紅潮した白い頬目掛けて――。