「本当!? 助かるわカーライル、よろしくね! 猫の手も借りたいところなの!」

 今までのルゼの役割を奪うかのようにカーライルはキャッキャとはしゃぐジェミーと隣り合って笑う。
 そうしてルゼにちらりと視線を寄越すと、フッと蔑んだ。

(ぐっ! な、なんだっていうんだよッ!)

 それを見たルゼの胸を、ぐっと疎外感が包み込む。
 トーミアス家の屋敷で時折感じた、世界で自分だけがぽっかりと浮いているような、虚しくて、逃げ出したくなる気持ち。
 それから、今まで芽生えたことのない、胸を焼く赤黒い感情も。

「ん? あなたたち、なにかあったの? おーい」

 ふたりは睨み合い……。
 その間に立ったジェミーは、剣呑な視線を遮ろうと両手でばたばたと手を振り、不思議そうに彼らを見上げた。

 行き当たりばったりの計画の下。自らを巡って、ふたりの青年の間に本気で穏やかならぬ事態が勃発してしまったことを、なお彼女は、これっぽっちも把握していないもよう――。