自分の名前がふたつあるような気がして頭が混乱する。
　誰かが自分を呼んでくれないと、気が触れてしまいそうだ。

「あっ！　ジェミー(・・・・)御嬢様、目を覚まされたのですね！」

　眠っていた自分以外誰もいない部屋に、律儀にノックして入ってきた若いメイドの名をジェミーは覚えている。ミリィだ。彼女はここ数年専属でジェミーの世話をしてくれている。

　比較的穏やかな性格の彼女ならジェミーがおかしなことを言ったとしてもさして気にするまい。だから尋ねた。頭がおかしくなったのかと思われるのを覚悟で。

「ねえ、ミリィ。私って、ジェミー・ペリエライツで間違いなかったわよね？」

　するとミリィは目を丸くしながら、おずおずと応えてくれた。

「そ、その通りでございます。あなた様はこの名門公爵家、ペリエライツ家のご長女にあらせられます、ジェミー御嬢様に相違ございません」
「そうよねぇ。うんうん」