「クラフト殿下のここでの働きを皇帝陛下から聞き出して、あなたが持っている情報と照らし合わせ、カレンベール帝国を今の状況から脱却させる。その目的を達成するには。今の段階で関わらせる人数はなるべく多くない方がいい。こちらにクラフト殿下の手の者だって潜んでいるかもしれませんし」
「は、話はわかりました。けど、本当にクラフト殿下がこの国の弱みを握っているのかは、まだ」

 ルゼの言う、ジェミーが持つ情報というのは物語上のクラフトの功績のことだが、それは彼がレビエラ王国を救ったという事実をもとに構成されていて、皇帝がどんな事実を抱えているのまではわかっていないのだ。
 だがその不安をもルゼは払拭してくれた。

「それに関してはおそらく大丈夫。皇帝はたちどころに我々の話を受け入れたでしょう? 相当追い詰められていると思っていい。詳細を知れば解決すべき事実が浮かび上がってくるはずです」
「うう~、信じますからね」

 彼の頼もしい言葉に勇気づけられ、ジェミーは両手のひらをきゅっと握り前を見据える。その頃には、老齢の宰相がひとつの扉へと手をかけていた。