（なにかあったのかしら）

　商店街や市場といった、人の集まる場所ですら閑散としていて、日中にもかかわらず閉められている店舗もたくさんある。いったいどうしたというのだろう？

　そんなことを思いながら、ジェミーが異国の首都の風景を満喫していると、こちらに注目している人々の姿が見受けられた。
　彼らはひそひそと囁きを交わしながら、ジェミーと目が合うとすぐに逃げるようにどこかに行ってしまう。どうも嫌われているというか、怯えられているような感じで――。

「はっ、まさか！　帝国領内の人にまで、私の顔は恐れられてしまうというのっ!?」

　がーん。ショック過ぎて自分の顔が一瞬、劇画的雰囲気になってしまった錯覚まで覚えていると、ルゼが冷たく「そんなわけないでしょう」と一言。
「まあ、この国がこちらに戦争を仕掛けようとしていたのは大陸中に知れ渡っていますからね。実際に戦いにならなくても周辺諸国から非難の声明をいくつも出された手前、正直気まずいのは確かでしょう」
「ですよねぇ」