(ふえ~ん。外ならなにしてもいいんだって言うんだから、勝手なもんだわよ~)

 ジェミーは暗殺を仕掛けられたのに糾弾できない悔しさやら、王族との対面の緊張やらで情緒を非常に不安定にさせながら、泣きそうな気持ちで王太子を待ち受けた。
 それプラス、苛々が募るほど長い時間を待たされた後に、扉の外から大声が響く。

「王太子殿下のお成りにございます!」

 王宮の従卒により貴賓室の扉がバッと開かれ、そしてその人物は姿を現した。

「ずいぶんと待たせた。仕事が立て込んでいたものでな」

 背はそう高くはないが、すらっとした見栄えのする体躯。その上からは黄金色に輝く髪と瞳が眩しくこちらの瞳を射抜き、曇りない白を基調とした衣装が彼の美しさを欠片も損なうことなく引き立たせている。あの髪の上に黄金の冠が輝けば、さぞしっくりくることだろう。
 精悍さという点では第二王子に軍配が上がれども、華麗さという点では彼の方が大きく勝る。

(これが、この国の王太子――)