国王との謁見ほど仰々しさはなさそうだけど、それでも王宮内の格調高い貴賓室に招かれたジェミーは、ここへ連れてきたルゼの隣でガクブルと肝を冷やすばかりだ。なんせ、相手は自分を何度も殺そうとしたと目される相手。

「どうして私までデール王太子と顔を合わせなければなりませんの?」
「あなたが直接申し出た方が、相手を納得させやすいからです。それにこちらもアルサイド様を引き合わせるわけにはいきませんし、出席するのが僕だけでは交渉相手として格が足りませんよ」

 ルゼの主、第三王子アルサイドは王族の血を絶やさぬために、極力外部の人間と顔を合わさないことを徹底しているらしい。その範囲は実の兄弟までにも及び、その姿を知っているのは世話をしている人間や国王夫妻くらいのものだという。
 当のルゼも実際に会ったことはないんだとか。

 そういう話を聞くと、彼の協力を得られているという事実もなんだか実体がないようで、よりいっそう不安になってくる。

「うう。本当に大丈夫なんでしょうか。いきなり兵士たちに取り囲まれて、牢獄へ放り込まれたり、顔を合わせた途端ばっさり、なんてことはないんですわよね?」
「当然でしょう。ここは王宮ですよ? そんな蛮行に及んだらさすがに王太子といえど、処断は免れません。王位継承が迫るそんな時期に、自らその椅子を放り出すような真似をするのなら、最初からこんなことになってはいない」