(ここへきて、か。このために沈黙を守っていたとすると、末の日陰者も存外侮れぬ。継承争いに(かこつ)け、俺に手柄を売りつけ立場を強化したいという思惑でもあるのかもしれんが。意図が読めんのは気分が悪いな。だが)

 デールは小さく肩を揺らし始めると、やがて立ち上がり高々と笑い始めた。

「ククク、ハハハハハ! このまま終わるのでは少々つまらないと思っていたところだ!いいだろう、俺の邪魔をするのなら容赦はしない。クラフトもアルサイドも、ジェミーも、揃って目の前に跪かせてやる。この国の玉座に座るのは、この俺だ! ハァッ!」

 デールは壁にかけてあった儀礼用の騎士剣を勢いよく引き抜くと、手紙を宙に放り投げ、刀身で真っ二つに引き裂いてみせた。

 その隙間から覗く黄金の瞳。そこに映るのは、日頃冷血、臆病などと蔑まれようが隠そうともしない、いずれは王たらんと望む苛烈なまでのプライド――。