~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド

「さ、それじゃ怪しまれないうちにお互い屋敷に戻りましょう。僕はもうクタクタだ」
「夜会が終わってしまって残念ですわ。せっかくだから、もうちょっと王宮の美食を堪能しておきたかったのに」
「はぁ。あなたのその切り替えの早さは見習いたいところですね」
「それはありがとうございます」

 皮肉が通用しなかったルゼはハッと呆れ気味に笑うと、庭園の影から踏み出していく。
 それに続こうとしながら、ふと後ろ髪を引かれジェミーは夜空を見上げた。そこに輝くのはたとえようのない美しい満月。

 月――タロットではしばしば神秘と不安と示す、不吉なカードとされる。なんだかこの満月が、まだまだジェミーへの災難は尽きないことを暗示しているような気がする。

 だとしても。

(どうにだってしてみせる。簡単には諦めてやらないわよ)

 ジェミーの運命はジェミーだけのもの。それに向けてビシッと挑戦的に指をつきつけると、彼女はルゼを追って前向きな気持ちでその場を駆け出してゆく。