「それじゃ、くれぐれも、早まった行動は取らないように」

 その後はいつも通り。そんな風にびしっと釘をさすと、ルゼは少し恥ずかしそうにしながら、昼食の後を片づけて踵を返していった。

(慰めてくれたのかな?)

 その背中を見てジェミーは不思議な気持ちになりつつ、なんとかなるような気がしてきて、そのままベンチに体を預ける。するとしばらくの間、ルゼのハンカチの残り香が周りを守ってくれているようで。

 ――キーンコーンカーンコーン。

「はっ! やばっ」

 ウエストミンスターの鐘のごときチャイムが鳴り響き、爆睡していたジェミーは慌てて教室に走ることになる。善処はしたが授業に遅れ、教師からの説教は免れなかった。