「む……。仕方ないな。ならば今しばらくはお前を信じて自由にさせよう。学期末の試験も期待しているぞ」
「あっ――」

　ジェミーは雷に打たれたように硬直する。
　そうだ、トーミアス邸に訪問した時からなにか重要なことをを忘れた気がしていたのだが、本人から言われたことで今完全に思い出した。それは父ガースルとの約束だ。

　彼にジェミーは宣言したのだ。夏に行われる学期末試験にて、必ず彼の妻となるにふさわしい力量を示してみせます、と。　

（そうだ！　このまま学期末の試験が終わったら、私クラフト殿下と婚約することになってんじゃん。どーしよーっ！）

　好成績を残せばそれはクラフトとの婚約に繋がってしまうし、だからって手を抜いてみっともない成績を取ったなら、ジェミーズ・ドロアーの経営を辞めさせられてしまうかも。これはまず過ぎる！

　父と母が仲睦まじく娘の成長を喜び合う中、ジェミーはせっかく順調になってきた日々に暗雲が立ち込めてきたことを知って、ひとり座席の上であうあうと言葉を詰まらせるのだった。