(なにか用事かしら)

 放課後になってクラスメイトたちと歓談していると、廊下の外でルゼが佇んでいる。どうやらジェミーを出待ちしている様子だ。いつもはそれとなく監視しているだけで、表立って姿を表すことはないのに。
 話を切り上げて教室の外に出ると、ルゼが人気のないところで話しかけてきた。

「この後、少し話をできます? 先日の件について。学内ではなんですので、我が屋敷にお越しいただきたいのですが」
「わかりました。下校したらすぐにでも」

 ずいぶん念の入ったことだ。
 本当は今日も店で引き続き従業員にいろいろと教えて回る予定だったのだが、やむをえまい。短い会話を済ませると、ジェミーは迎えに来ていた馬車に乗り込み、トーミアス邸へと向かった。

「ようこそお越しくださいました。ペリエライツ公爵令嬢様」
「お久しぶり。以後ジェミーでよろしくてよ。ウィリアムさん」

 家令ウィリアムの出迎えに礼を言い、ジェミーはミリィを伴うとこの間の部屋へと向かう。そこではすでにルゼが腰掛けていた。