そうして彼女の身の安全が保障された暁には、以後手を出さず成り行きを見守っていけばいい。第三王子殿下は玉座を欲するつもりはまったくない。穏便に王位継承が進むならば、ふたりの兄のうちどちらが国王になろうどうだっていいのだ。

 王国に危機が訪れた際、自分が表舞台に出ることのないように陰から手を回す。
 それが第三王子のスタンスであり、その影となり手足となり忠実に動く。それが、このあまり名を知られていない謎めいた伯爵家の主、ルゼ・トーミアスの役割だ。