ジェミーたちが去った後。執務用の座席に座ると、トーミアス家当主ルゼはしばらく考え込んだ。

「ジェミー・ペリエライツ、か」

 苦々しく呟くと、彼は彼女について得た情報を改めて反芻していく。

 ウィリアムの作成した身辺調査書によれば彼女は、ペリエライツ公爵家の長女として育てられ、両親に溺愛されて育ったせいか、すでに六歳を迎える頃には悪女の片鱗を見せていたという。

 気に入らないものは決して口にしない。他家の子供が持っているものを強引にぶんどる。そばの使用人を這いつくばらせて馬のように扱ったり、自分の言葉に従わなければ、手が出る口が出る。およそあの娘は家でも外でも、暴君のように振る舞っていたということだ。

 よく家族が見放さなかったものだと思うが、それも将来を見越してのことだとすれば正しい判断だったのだろう。なにせ、彼女は公爵家の娘として第二王子の関心を得るに至ったのだから。