ヒロインはもちろん、心の純粋な美しい少女だ。孤児院で育った彼女はある日、幸運なことに貴族の家に養子として引き取られる。しかし、それはつらい我慢の日々の始まりでもあった。家で彼女は家族に疎まれ、苦しい思いをしながらも少しずつ、貴族としての教養や学問を身に着けてゆく。

 いつしかそんな努力は身を結び、やがてヒロインは王族たちも通うような高等学校に推薦入学する。そこで彼女に運命の出会いが待ち受けていた。以前街中で暴漢に襲われたところ、命を救ってくれたひとりの青年に再会するのだ。

 実は彼は王位継承権二位を持つ第二王子で、狡猾な王太子が王位に就けば国を荒らしてしまうと自らが立ち上がることを決め、ある公爵家に後ろ盾を頼むため、すこぶる評判の悪いそちらの令嬢に婚約を申し込んでいる。

 ヒロインはそんな彼と偶然にも幾度も接触することになり、悩みを打ち明け合う。やがて心には淡い恋心が芽生えるのだが、すでに相手には目的のため心に決めた女性が。
 葛藤の様子にジェミーは涙でべとべとにしたスマホを、ふつふつ煮立つお味噌汁の鍋に落っことしてしまったくらいだ。

『ううーっ、×××ちゃん、かわいそ過ぎるんだわ。――っ熱っづ! ちょっ待っ、スマホが死ぬ!!!』