俺の彼女は高校教師

 駅を降りていつもの道を歩く。 商店街もまだまだ賑わってるなあ。
「あれれ? 宏明じゃないか。 どうした?」 「いやいや、事情止む無く昼で終わったもんだから帰ってきたんだよ。」
「サボったんじゃないだろうなあ?」 「大丈夫大丈夫。 こいつも一緒だから。」
 店から出てきた母ちゃんに香澄を見せ付けてやる。 「そうかそうか。 また香澄ちゃんを連れてきたのか。」
「こちらさんが勝手に引っ付いてきたんだよ。 迷惑なのに。」 そしたら香澄が脇腹をど突いてきた。
「いてえなあ。 何すんだよ?」 「弘明君が呼んだんでしょう?」
「呼んでねえよ。 こんなの誰が呼ぶかって。」 「ひどーーーーい。 お母さん何とかして。」
「仲良しねえ。 まあ程々にするのよ。 香澄ちゃん。」 「ほら見ろ。」
 香澄はそれからずっと膨れっ面のまま。 「河豚が風船になった。」
「可愛いでしょう?」 「ぜんぜん。 カタツムリのほうが余程に可愛いわ。」
「泣いてやるーーーー。」 「勝手にどうぞ。」
「冷たいんだからなあ。」 「いつものことですわよ。」
 そんなこんなで昼間から何をやってんだか、、、。 家に入ってまずは居間でのんびり、、、。
と思ったら香澄はまたまた俺に飛び付いてきた。 「可愛がってよね。」
「オー、変なのが来た。」 「変なのって誰のこと?」
「お前しか居ないだろう。 馬鹿。」 「また馬鹿にしたなあ。」
「許さないんだからーーーー。」 (甘えてやるんだからーーーー。)
「誰に甘えるんだよ?」 「もっちろん宏明君よ。 ウフ。」
 「きもいやつだなあ。 お前は。」 「何ですって? 私がきもいって?」
「そうだよ。 せめて松坂慶子くらいの美人だったら甘えさせてもいいけど。」 「無理言わないでよ。 私は私なんだから。」
「じゃあ俺は俺だ。 いいな?」 「しょうがないなあ。 分かったわよ。」
 そう言いながらも香澄は俺に甘えてくるんですわ。 助けてくれーーーー‼
コーヒーを飲んでぼんやりしているとスマホが鳴った。 「メールだな。」
見ると律子からだ。 「何だろう?」

 『香澄 来てる?』

 『ああ、来てるよ。』

 『そっか。 仲いいのねえ。 羨ましいわ。』

 『ぜんぜん。 小百合にでも拾ってもらいたいくらい。』

 『そうなの? じゃあ拾っちゃおうかな。』

 メールを書いた後でどうやら香澄に電話を掛けたらしい。 「えーーー? そうなの? じゃあ行くわ。」
電話を切った香澄は魚を捕まえた猫みたいな顔で嬉しそうに飛び出していった。 「何だい、あいつは?」
 部屋に戻って床に寝転がる。 平日のこんな時間から家に居るなんて何年ぶりだろうなあ?
小百合も絡んでこないし香澄もどっかへ行っちまった。 健太郎たちも家でのんびりするって言ってたし美和はまだまだ仕事中。
「こんな日もたまにはいいか。」 窓を閉めて寝転がっていたら俺はそのまま寝ちまった。
 「おーーい、ご飯だぞーーーー。」 父さんの声が聞こえる。
(今、何時なんだ?) 時計を見るともう7時。
父さんが帰ってきてもおかしくない時間だった。 よく寝たもんだ。
 「弘明、香澄ちゃんはどうした?」 「ああ、律子に呼ばれて帰ったよ。」
「そうなのか。 残念だなあ。」 「何が?」
「香澄ちゃんが好きなタコ焼き買ってきたのに。」 「ふーん。」
 姉ちゃんはまたまたツアーで広島に行っている。 厳島神社に詣でてくるって言ってたっけ。
「今夜は静かだなあ。」 「何で?」
「香澄ちゃんが居ないから。」 「居なくてもいいよ。」
「ほんとにいいのかい? お前も好きなんじゃ?」 「12年もあの調子でくっ付いてるんだよ。 いい加減嫌になるよ。」
「そんなことも有るのかなあ?」 母ちゃんはお茶を飲みながら父さんの顔を覗いた。

 この二人ももう25年はくっ付いてるんだよな。 何ともなかったのかなあ?
風呂に入っても考えるのは香澄のことばかり。 律子に誘われてすごーーーーーく嬉しそうな顔で飛び出していったっけなあ。
何をやってたかは知らんが、、、。 そこには小百合も居たんだそうで。
 この12年、長かったよなあ。 ひょんなことから仲良くなってそのままなんだもんな。
ばあちゃんにまで「お前たち結婚しなさい。」って言われちまってさあ。 その気にしたのは香澄だった。
 以来、陰みたいにずーーーーーーーーーーっと張り付いてるんだよ。 何とかしてくれよ あのお嬢様を。
 翌日、学校に行ってみるとクラスはいつもの通りの大騒ぎ。 「片山さあ、久保山にお説教されたんだってよ。」
「それでどうした?」 「なんか泣いて詫びたらしい。」
「あいつがねえ。」 「どうせまたやるよ。 飽きないやつみたいだから。」
「そうなの?」 「だって前にも同じことをやって研修センターに送られてるんだぜ。」
「そうなんだね。 可哀そうに。」 香澄は持ってきたポッキーをポリポリ、、、。
 「あれあれ? お嬢様が何か食べてるぞ。」 「やばいやばい。 見つかったらまたまた罰掃除だ。」
慌てている香澄を見ながらクスクス笑っていると黒板消しが飛んできた。 「汚いなあ。 考えろよ。」
「笑った罰よ。」 「ふーん、お前が罰ねえ。」
「何よ?」 「香澄様、ここは学校ですぞ。」
「分かってるわよ。 寺尾君みたいに雑誌は読んでないから。」 「寺尾、、、。 何か読んでたのか?」
「無い無い。 何にも無い。」 「そうかなあ? エッチな写真が見えたんだけど。」
「ワーーーーー、言うなあ‼」 どうなってんだい、このクラスは。