俺の彼女は高校教師

 そんなわけで吠えている香澄を抱き寄せて頭をなでなでしてやってるのですよ。 はあ、いつまで続くんだろう?
電車が来ても香澄様はポーっとしたまま。 「ほら行くぞ。 柴犬。』
「もう。 柴犬柴犬呼ばないでよ。」 「じゃあ何て呼べばいいんだよ?」
「香澄様。」 「グ、、、、。」
笑った拍子に俺は走り出した電車に顔をぶつけてしまった。 乗り遅れた上に顔をぶつけるなんて、、、。
 「最悪だなあ。 今日は。」 「私を虐めるからよ。 オホホ。」
「こんな貧乏神に惚れられた記憶は無いんだけどなあ。」 「何ですって? 貧乏神?」
「そうだよ。 性格は悪いしスタイルはデブだし顔も7枚目出し頭も悪いし、取る所無いんだよなあ。」 「ひどーーーーい。 ひど過ぎるわーーーー。」
香澄は行ってしまった電車を見ながら思い切り泣き始めた。 「またやってるわ。 ほっとこか。」
 しかし今日はいつまで経っても泣き止みませんなあ。 それも駅員のほうを向いて泣いてやがる。
駅員は箒を持って香澄をじっと見詰めております。 それから俺のほうを見て悲しそうな眼をするんだ。
 「しゃあねえな。 お嬢様。」 ポンポンと肩を叩いてやりますが、、、。
俺のほうを向いた香澄は「アッカンベエ‼」って言ってからまた泣き始めた。
「いい加減にしろよ。 馬鹿。」 「うわ、また馬鹿にした。」
頭を小突いた俺のほうを向いて舌を出してくる。 「きも、、、。」
「きもいって言ったなあ?」 「言ったけど何か?」
「明日はたっぷりおごってもらうからね。」 「アイス最中か?」
「あのねえ、そればっかり食べてたらお腹壊すでしょう。 考えてよ。」 「なあんだ。 アイス最中じゃないのか。」
「残念だった?」 「残念無念有馬記念。」
「面白くなーーーーーーい。」 「あははははは‼ 宏明君 面白過ぎよーーーーー。」
反対側のホームから聞こえてきたのは、、、、、? 俺も香澄も一瞬目が止まってしまった。
いつの間にかミナッチが来てたんだ。 「ミナッチじゃない。 ほらほら香澄、ミナッチにまた笑われたぞ。」
「いいんだもん。 宏明君が悪いんだもん。」 「香澄ちゃーーーーん、彼氏を虐めないの。」
「虐めてませーーーーーん。」 「お幸せにーーーー。」
ホームでなんちゅう会話をしてるんだか、、、。 さっきの駅員がまたまた俺を悲しそうな目で見つめてくるのでした。
 次に走ってきた電車に飛び乗ってシートに腰を下ろす。 ファー、寝たいよーー。
香澄は、、、? 隣に目をやると何とも幸せそうな顔で蹲るように座っております。
(何なんだよこいつ?) 不思議そうに見詰めていると、、、。
振り向いた香澄がいきなりキスをしてきた。 「ブ、、、。」
「どうしたのよ?」 「いきなりキスするなよ。。 馬鹿。」
「だって弘明君 好きなんだもん。」 「あのなあ、場所ってやつが有るだろうよ。」
「いいんだもん。 宏明君の隣が私の場所だもん。」 「あっそう。」
「冷たいなあ。 喜んでよ。」 「しーーーーらね。」
「意地悪ーーーーー。 最高の意地悪ーーーーーー。 泣いちゃうぞーーーーーー。」 「泣けよ 勝手に。」
 俺が冷たく突き放すとまたまた本気泣きを始めた。 これをやり出すと長いんだよなあ。
電車は走っております。 いつの間にか俺んちの近くにまで来ました。
香澄様はまだまだ泣き続けております。 俺が立ち上がったのにも気付いておりませんねえ。
(悪いやつだなあ。)とは思うけどそっと電車を降りましてホームから手を振ってやりました。
 そこまでしてやっと気付いたらしい香澄は蒼ざめた顔で電車の中を見回しております。 たまにはいいか。
俺は気にはなるけど商店街を抜けて帰ってきました。 「いやあ疲れた。」
「弘明、香澄ちゃん知らないか?」 「香澄?」
「まだ帰ってこないけど寄ってないか?ってお母さんから電話が来たのよ。」 「そうなの? 先に降りたんだろうなって思ってたけど。」
「そうか。 知らないか。」 母ちゃんは肉を焼きながら心配そうな顔をしてます。
 その頃、香澄は、、、? 30分ほど走った駅でやっと降りまして反対側のホームへ、、、。
「まったく、、、。 教えてくれないんだからなあ。 宏明君。」 ブツブツ言いながら電車を待っております。
「香澄かい? 今何処に居るんだ?」 「うーんとね、鴬が丘。」
「え鶯にまで行ったのか?」 「降り損ねちゃって。 ハハハ。」
「ハハハ、、、じゃないわよ。 お父さんが迎えに行くから待ってなさい。」 「いいよ。 もうすぐ電車が来るから。」
 スマホを切ると駅に入ってきた電車に飛び乗って、、、。 「今度はちゃんと降りなきゃな。」
自分に言い聞かせてシートに座り込むのでした。
 30分後、やっと戻ってきた香澄は電車を降りると俺の家にやってきた。 「あらあら、香澄ちゃんじゃない。 どうしたの?」
「降り損ねて戻ってきたから寄ろうと思って。」 「何か分かんないけど、、、。 弘明ーーーーーー‼」
母ちゃんがでっかい声で俺を呼んでいる。 寝たふりを決め込んではみたけれど、、、。
「あんた、呼んでるよ。 行きなさい。」 旅行から帰ってきたばかりの姉ちゃんが部屋に入ってきた。
「香澄のことなんだろう? ほっといても、、、。」 「違うよ。 香澄ちゃんが来てるのよ。」
「何だってーーーーーー? 香澄が?」 「早く行きなさいよ。」
 そこで俺は階段の上から一階を覗き込みました。 「そうなのか。 宏明が教えなかったのね?」
「そうなんですよ。 私を泣かしておいて、、、。」 「まずいなこりゃ、、、。」
 そーーーーーっと居間に入っていくと。 「弘明、ちっとは香澄ちゃんのことを考えてやれよ。」
「とは言うけど、、、。」 「とはもにはも無いんだ。 お前がちゃんとしないから香澄ちゃんがこうなるんだぞ。」
「元はと言えば、、、。」 「元もくそも無い。 謝れ。」
「謝れって言われても困るよ。」 「何が困るんだ? 困ることは無いだろう?」
何か今夜の家族は変な感じ。 父ちゃんまで赤くなって怒りだした。
 「だって、、、。」 「だってもとっても要らない。 謝れ。」
俺を睨みつける父ちゃんを母ちゃんも心配そうに見ている。 「香澄ちゃん ちょっと、、、。」
 雰囲気を察した姉ちゃんが香澄を呼び付けた。 「あんたさあ、ほんとに弘明が悪いと思ってる?」
「だってこうなんだもん。」 香澄が俺のことを話していると、、、。
「なあんだ。 そんなことか。 あんた馬鹿じゃないの?」って姉ちゃんが笑い転げてしまった。
「どうしたんだよ?」 これには父ちゃんも驚くやら恥ずかしいやら、、、。
「お父さん 宏明は悪くないよ。 いつもの喧嘩じゃない。 それでちょっと弘明が意地悪したのよ。」 「そんなこと?」
「私だって高校の頃はいろんなことやられたわ。 それから考えれば、、、。」 「そうなのか。」
 そしたらトラックのクラクションが聞こえた。 「迎えに来たみたいね。」
「やあ、吉田さん。 香澄がお邪魔になりまして。」 「何で分かったの?」
「帰ってこないから多分そうだろうなと思って。」 「お父さん、、、。」
「お前の行動は実に分かりやすい。 何か有ればすぐ弘明君だもんなあ。」 「それでお迎えに?」
「そうですよ。 香澄は弘明君一択なんですから。」 「すいません。」
「謝る事なんか要るもんか。 これからもよろしく頼みましたぞ。 まあこれをみんなで食べてくださいな。」
そう言ってお父さんが差し出したのは脂が載り始めた鰤の刺身だった。

 次の日、学校に行ってみると香澄はずっと俺にくっ付いてくるのでありました。 「どうしたんだよ?」
「だって弘明君しか居ないんだもん。」 「正樹だって五郎だって秀樹だって居るだろうによ。」
「可愛がってくれないもん。 宏明君が一番いいんだもん。」 「へえへえ、そうですかそうですか。」
「何よ? その言い方?」 「片思いだって野にまだ気付いてないのか?」
「それでもいいんだもん。 くっ付いてやるんだもん。」 「タコか。 お前は?」
「チューーーーーーーーーー。」 「アホ。」
「何ですって? アホ?」 「そうでーーーす。 アホでーーーす。」
「また泣いてやるぞ。」 「ご自由にどうぞ。」
「ねえねえ、律子。 あの二人何とかしてよ。」 「無理だよ。 メロドラマの見過ぎなんだから。」
「弘明君はいいけどさあ、香澄は、、、。」 「ほっといていいわよ。 そのうちに分かるわ。」
「分かればいいけど、、、。」 二人は呆れ顔で俺を見詰めるのでした。