二人が隣の部屋でレコードを聞き始めた。 美和は俺の向かい側に座ってコーヒーを飲んでいる。
静香に時間が過ぎていく。 「先生、あの時はごめんなさい。」
俺はやっとそれだけ絞り出すと俯いてしまった。 「私もあなたに知らせなきゃいけないことが有るの。 聞いてくれる?」
「はい。」 「実はね、妊娠したのよ。 予定日は8月中旬だって。」
「ほんとに?」 「そう。 あなたの子よ。」
「先生、、、。」 「私ね、しばらくはあなたに会いたくないって思ったの。 だから学校も休んだのよ。」
「ほんとにごめんなさい。 俺が責任取ります。」 「取れる?」
「先生のために死ぬ気で働くよ。 だから、、、。」 「そうか。 私ね、妊娠が分かってからしばらく悩んだのよ。 でも気付いたの。 あなたを愛してるんだなって。」
「ほんとに?」 「だから一日でも早く会いたいって思ってたわ。」 「おめでとう‼」
そこへ小百合と純が戻ってきた。 「弘明君 良かったじゃない。」
「先生、、、。」 「今まで通りに美和って呼んでいいのよ。 宏明君。」
「えーーー? そんな仲だったの? 驚きーーーーー。」 「純、驚き過ぎ。」
「だってだって知らなかったんだもん。」 「それはそうかもしれないけど、、、。」
「みんなさあ夕食食べて行くでしょう?」 「でも悪いから、、、。」
「いいのよ。 今日は記念の日だから。」 「記念の日?」
「私が料理作るからみんなで食べましょう。」 空気が変わっちまった。
美和はエプロンを着けると台所に立った。 「お手伝いしてきなさいよ。 宏明君。」
「でも、、、。」 「いいじゃない。 旦那様なんだから。」
「それはちょっと、、、。」 「弘明君 手伝って。」
「ほら、奥さんが呼んでるわよ。」 二人はニヤニヤしながら俺を送り出すんだ。
俺は緊張した顔で美和の隣に立った。 「野菜切るのをお願いね。」
いつもの笑顔で話し掛けてくる。 玉ねぎを切っていると小百合が飛んできた。
「危ないなあ。 玉ねぎはこうやって、、、、。」 何か知らんが空気がほんとに変わってしまった。
完全無視でもいいくらいなのに美和はあの日のように俺を受け入れてくれた。 信じられなかった。
「妊娠してることが分かった時ね、思ったんだ。 これが愛するってことなんだなって。」 「愛する?」
「そう。 好き嫌いなら誰だって言えるわよ。 でも愛してるって簡単には言えないよね。」 「そうなのか。」
「会う人みんなに愛してるなんて言ったらどうかしてるわよ。」 「それもそうだね。」
「妊娠が分かるまでは悩んだし悔しかったし恨んだりもしたわ。 でも確かに弘明君の子供がここに居るの。 それは紛れも無い事実なのよ。」
夕食を食べながら幸せそうな顔で美和は話し続ける。 「会えて良かったわ。」
マンションからの帰り道、俺はどっか満たされた気になっている。 「だから言ったでしょう。 会いなさいって。」
「そうだったな。」 「これで弘明君も一人の男になったわけねえ。」
「あんな可愛い人を捕まえちゃって、、、。 やりやがったな、このこのこの。」 純も羨ましそうに俺を突いてくる。
「まあいいじゃない。 これからが本当の勝負よ。」 「そうだねえ。 仕事も決めないとね。」
「アグ、、、。」 「どうしたの?」
「いや、何でもない。」 「そっか。 まだ決まってないんだ。」
「う、、、、。」 「しっかり選んで早く決めなさい。 お嫁さんが可哀そうよ。」
今夜は二人に持ち上げられたり突っ込まれたり、、、。 でも明日からが心配だ。
マンションを出て歩いて帰ろうと思ったらタクシーが走ってきた。 「え? 誰が呼んだの?」
「誰も呼んでないはずだけど、、、。」 そこへ小百合のスマホが鳴った。
「タクシー来たでしょう?」 「先生が呼んだの?」
「夜道を歩いて帰るのは危険だから。 みんなで乗って行って。」 「ありがとうございまーす。」
「そっか。 そういうことか。」 「弘明君のおかげだね。」
「何でだよ?」 「だって奥さんなんでしょう? 優しいわねえ。」
「まだまだ奥さんじゃないってば。」 「決まったも同じよ。 大切にしなさいよね。」
「分かった分かった。」 この3人、タクシーに乗っても賑やかであります。
それにしても今日は緊張しまくったなあ。 美和にやっと会えたよ。
その代わりに姉ちゃんの反応が怖いんだけど、、、。 「もう抱いてなんて言えないんだなあ。」なんて言ってきそうで、、、。」
でもそれ以上に怖いのは香澄の反応だ。 美和が妊娠したことを知ったら逆上じゃ済まないだろうなあ。
月曜日が怖いわ。 どうしようねえ?
さてさて14日はその月曜日ですよ。 小百合と純はどっかスッキリした顔で昇降口を入ってきた。
香澄は香澄でいつものように、、、と思ったらいつも以上におとなしくなってる。 何か変だぞ。
「おはよう。 宏明君。」 小百合が声を掛けてきた。
「お、おはよう。」 「昨日は寝れたかな?」
「緊張しまくったから爆睡しちゃったよ。」 「もしかして面接より緊張した?」
「かもしれないなあ。」 「その調子で早く採用通知を貰ってね。」
「あ、ああ。 分かってるよ。」 そしてみんなは教室へ、、、。
ホームルームを済ませるとみんなはまたまた面接の列に並ぶ。 今日こそは決めないとな。
俺が受けたのは車の修理工場だった。 「君の度胸を買ったよ。 卒業したらぜひ来てくれ。」
工場長は俺の手を握ってきた。 ごっつい手だった。
昼休み、図書館に行ってみると、、、。 司書室から聞き覚えの有る笑い声が聞こえてくるじゃないか。
(美和だ。 美和が来てる。) 俺は恥ずかしいやら何やらで本棚に隠れながら本を読んでいる。
すると美和が部屋から出てきた。 「久しぶりに本でも読もうかな。」
(こっちには来るなよ。 頼むからこっちには来るなよ。) 祈るような気持ちで本を読んでいると、、、。
美和はあの笑顔で隣に座ってきた。 (ゲ、来やがった。)
「何か嫌そうね?」 「そうでもないよ。 ははは。」
「緊張してるんでしょう? 何か言われるんじゃないかって。」 「それは、、、。」
「司書室でも放したの。 宏明君のこと。」 「えーーーーーー? 話しちゃったの?」
「大事にしてもらいなさいって。 ほんとに好きだったら一生離さないようにしなさいって言われたわ。」 「そうなのか。」
「あらあら、誰かと思ったら高橋さんじゃない。 元気になったの?」 そこにミナッチが入ってきた。
「ご心配お掛けしました。 実はおめでたなんです。」 「え? 誰が?」
驚いているミナッチは俺たちを交互に見詰めている。 「もしかして?」
「そうなんですよ。」 「そうだったの? おめでとう。」
「まさかとは思ったんですけど、、、。」 「高橋さんと吉田君ねえ。 お似合いじゃない。」
「そうですか?」 「まだ誰にも話してないんでしょう?」
「卒業式までは秘密にしておこうかと、、、。」 「そのほうがいいわね。 久保山先生もこういうことにはうるさいから。」
今日、美和が学校に顔を出したのは久保山先生にも秘密にされてます。 ホームルームで漏らされちゃ適わないから。
昼休みが終わってその教室に戻ってくると、、、。 香澄は窓を見詰めながらぼんやりしてますよ。
「何か有ったのか?」 律子に聞いてみる。
「別に何も無いはずだけどなあ。」 「もしかしてさ、小百合と仲良くしてるから妬いてるんじゃないの?」
「そうかなあ? それは違うんじゃない?」 「そうかなあ? 最近の香澄は小百合を警戒してるから、、、。」
「私って警戒されてたの?」 小百合たちが盛り上がっていると香澄は教室を出て行った。
「また行方不明事件を起こすんじゃないの?」 「ちょっと見てくるよ。」
俺はそっと香澄を追い掛けた。
静香に時間が過ぎていく。 「先生、あの時はごめんなさい。」
俺はやっとそれだけ絞り出すと俯いてしまった。 「私もあなたに知らせなきゃいけないことが有るの。 聞いてくれる?」
「はい。」 「実はね、妊娠したのよ。 予定日は8月中旬だって。」
「ほんとに?」 「そう。 あなたの子よ。」
「先生、、、。」 「私ね、しばらくはあなたに会いたくないって思ったの。 だから学校も休んだのよ。」
「ほんとにごめんなさい。 俺が責任取ります。」 「取れる?」
「先生のために死ぬ気で働くよ。 だから、、、。」 「そうか。 私ね、妊娠が分かってからしばらく悩んだのよ。 でも気付いたの。 あなたを愛してるんだなって。」
「ほんとに?」 「だから一日でも早く会いたいって思ってたわ。」 「おめでとう‼」
そこへ小百合と純が戻ってきた。 「弘明君 良かったじゃない。」
「先生、、、。」 「今まで通りに美和って呼んでいいのよ。 宏明君。」
「えーーー? そんな仲だったの? 驚きーーーーー。」 「純、驚き過ぎ。」
「だってだって知らなかったんだもん。」 「それはそうかもしれないけど、、、。」
「みんなさあ夕食食べて行くでしょう?」 「でも悪いから、、、。」
「いいのよ。 今日は記念の日だから。」 「記念の日?」
「私が料理作るからみんなで食べましょう。」 空気が変わっちまった。
美和はエプロンを着けると台所に立った。 「お手伝いしてきなさいよ。 宏明君。」
「でも、、、。」 「いいじゃない。 旦那様なんだから。」
「それはちょっと、、、。」 「弘明君 手伝って。」
「ほら、奥さんが呼んでるわよ。」 二人はニヤニヤしながら俺を送り出すんだ。
俺は緊張した顔で美和の隣に立った。 「野菜切るのをお願いね。」
いつもの笑顔で話し掛けてくる。 玉ねぎを切っていると小百合が飛んできた。
「危ないなあ。 玉ねぎはこうやって、、、、。」 何か知らんが空気がほんとに変わってしまった。
完全無視でもいいくらいなのに美和はあの日のように俺を受け入れてくれた。 信じられなかった。
「妊娠してることが分かった時ね、思ったんだ。 これが愛するってことなんだなって。」 「愛する?」
「そう。 好き嫌いなら誰だって言えるわよ。 でも愛してるって簡単には言えないよね。」 「そうなのか。」
「会う人みんなに愛してるなんて言ったらどうかしてるわよ。」 「それもそうだね。」
「妊娠が分かるまでは悩んだし悔しかったし恨んだりもしたわ。 でも確かに弘明君の子供がここに居るの。 それは紛れも無い事実なのよ。」
夕食を食べながら幸せそうな顔で美和は話し続ける。 「会えて良かったわ。」
マンションからの帰り道、俺はどっか満たされた気になっている。 「だから言ったでしょう。 会いなさいって。」
「そうだったな。」 「これで弘明君も一人の男になったわけねえ。」
「あんな可愛い人を捕まえちゃって、、、。 やりやがったな、このこのこの。」 純も羨ましそうに俺を突いてくる。
「まあいいじゃない。 これからが本当の勝負よ。」 「そうだねえ。 仕事も決めないとね。」
「アグ、、、。」 「どうしたの?」
「いや、何でもない。」 「そっか。 まだ決まってないんだ。」
「う、、、、。」 「しっかり選んで早く決めなさい。 お嫁さんが可哀そうよ。」
今夜は二人に持ち上げられたり突っ込まれたり、、、。 でも明日からが心配だ。
マンションを出て歩いて帰ろうと思ったらタクシーが走ってきた。 「え? 誰が呼んだの?」
「誰も呼んでないはずだけど、、、。」 そこへ小百合のスマホが鳴った。
「タクシー来たでしょう?」 「先生が呼んだの?」
「夜道を歩いて帰るのは危険だから。 みんなで乗って行って。」 「ありがとうございまーす。」
「そっか。 そういうことか。」 「弘明君のおかげだね。」
「何でだよ?」 「だって奥さんなんでしょう? 優しいわねえ。」
「まだまだ奥さんじゃないってば。」 「決まったも同じよ。 大切にしなさいよね。」
「分かった分かった。」 この3人、タクシーに乗っても賑やかであります。
それにしても今日は緊張しまくったなあ。 美和にやっと会えたよ。
その代わりに姉ちゃんの反応が怖いんだけど、、、。 「もう抱いてなんて言えないんだなあ。」なんて言ってきそうで、、、。」
でもそれ以上に怖いのは香澄の反応だ。 美和が妊娠したことを知ったら逆上じゃ済まないだろうなあ。
月曜日が怖いわ。 どうしようねえ?
さてさて14日はその月曜日ですよ。 小百合と純はどっかスッキリした顔で昇降口を入ってきた。
香澄は香澄でいつものように、、、と思ったらいつも以上におとなしくなってる。 何か変だぞ。
「おはよう。 宏明君。」 小百合が声を掛けてきた。
「お、おはよう。」 「昨日は寝れたかな?」
「緊張しまくったから爆睡しちゃったよ。」 「もしかして面接より緊張した?」
「かもしれないなあ。」 「その調子で早く採用通知を貰ってね。」
「あ、ああ。 分かってるよ。」 そしてみんなは教室へ、、、。
ホームルームを済ませるとみんなはまたまた面接の列に並ぶ。 今日こそは決めないとな。
俺が受けたのは車の修理工場だった。 「君の度胸を買ったよ。 卒業したらぜひ来てくれ。」
工場長は俺の手を握ってきた。 ごっつい手だった。
昼休み、図書館に行ってみると、、、。 司書室から聞き覚えの有る笑い声が聞こえてくるじゃないか。
(美和だ。 美和が来てる。) 俺は恥ずかしいやら何やらで本棚に隠れながら本を読んでいる。
すると美和が部屋から出てきた。 「久しぶりに本でも読もうかな。」
(こっちには来るなよ。 頼むからこっちには来るなよ。) 祈るような気持ちで本を読んでいると、、、。
美和はあの笑顔で隣に座ってきた。 (ゲ、来やがった。)
「何か嫌そうね?」 「そうでもないよ。 ははは。」
「緊張してるんでしょう? 何か言われるんじゃないかって。」 「それは、、、。」
「司書室でも放したの。 宏明君のこと。」 「えーーーーーー? 話しちゃったの?」
「大事にしてもらいなさいって。 ほんとに好きだったら一生離さないようにしなさいって言われたわ。」 「そうなのか。」
「あらあら、誰かと思ったら高橋さんじゃない。 元気になったの?」 そこにミナッチが入ってきた。
「ご心配お掛けしました。 実はおめでたなんです。」 「え? 誰が?」
驚いているミナッチは俺たちを交互に見詰めている。 「もしかして?」
「そうなんですよ。」 「そうだったの? おめでとう。」
「まさかとは思ったんですけど、、、。」 「高橋さんと吉田君ねえ。 お似合いじゃない。」
「そうですか?」 「まだ誰にも話してないんでしょう?」
「卒業式までは秘密にしておこうかと、、、。」 「そのほうがいいわね。 久保山先生もこういうことにはうるさいから。」
今日、美和が学校に顔を出したのは久保山先生にも秘密にされてます。 ホームルームで漏らされちゃ適わないから。
昼休みが終わってその教室に戻ってくると、、、。 香澄は窓を見詰めながらぼんやりしてますよ。
「何か有ったのか?」 律子に聞いてみる。
「別に何も無いはずだけどなあ。」 「もしかしてさ、小百合と仲良くしてるから妬いてるんじゃないの?」
「そうかなあ? それは違うんじゃない?」 「そうかなあ? 最近の香澄は小百合を警戒してるから、、、。」
「私って警戒されてたの?」 小百合たちが盛り上がっていると香澄は教室を出て行った。
「また行方不明事件を起こすんじゃないの?」 「ちょっと見てくるよ。」
俺はそっと香澄を追い掛けた。



