俺の彼女は高校教師

 その日は家に帰ってきても重苦しい顔をしたまま。 yesともnoとも言えない複雑な心境だ。
「小百合はあんな風に言ってたけどさ、、、。」 夕食を済ませて部屋に戻ってもなかなか決断できないでいる。 「どうしたらいいんだよ?」
 トントン。 俺がもがいていると姉ちゃんが入ってきた。
「弘明君 またまたお悩みモードなのね?」 (ギク、、、。)
「私に話しなさい。 話せるでしょう?」 「でも、、、。」
「美和のことでしょう? 分かってるのよ。) (ギク、、、。)
「やっぱりか。 あんたはほんとに分かりやすいなあ。 で、何なのよ?」 「実はさ、、、。」
ここまで来たら話すしかない。 小百合に言われたことをそのまま話してみた。
 「そうねえ。 3か月も休んでるんだもんね。 妊娠してる可能性は十分に有るわよ。」 「だからさ、、、。」
「いいじゃない。 小百合ちゃんと様子を見に行きなさいよ。 美和だって最初は驚くかもだけど拒んだりはしないよ。」 「そうかなあ?」
「もしも妊娠してたら弘明君にほんとのことを話したいって思うでしょうね。 今まで相思相愛だったんだから。」 「それはそうかもしれないけど、、、。」
「思い切ってアタックしなさい。 俺が責任を取るからって。」 「でも、、、。」
「それが出来なかったら一生誰ともエッチなんかしないことね。 我慢できる?」 「それは、、、。」
「出来ないんだったら責任を取りなさい。 それが男よ。」 「そうだね。」
「さあお風呂に入ろう。 私を抱いてもいいんだから。」 「それはちょっと、、、。」
「何? ばらしてほしいの?」 「いやいや、それは困る。」
「だったら言う通りにしなさい。」 「分かったよ。」
やっぱりね、姉ちゃんには逆らえない。 そんなもんだからお風呂に入っていつも以上に萌えちゃったのであります。
うーーーーん、馬鹿。 「ほんとにまあ、あんたは激しいのね。」
「何でだよ?」 「私まで妊娠しちゃいそうだわ。」
「それは無いと思うよ。」 「何で言い切れるのよ? 美和に妊娠させといて。」
「それだってまだ決まったわけじゃないってば。」 「でも8割がたはそうだと思うなあ。 じゃなかったら出てきてるはずだよ。」
「うーーーーん、、、。」 「言い返せないんだから反論しないことね。 お、や、す、み。」
姉ちゃんはまたまた悩ましい笑顔で部屋を出て行くのであります。 寝れなくなるだろうがよ‼
 12日は土曜日。 今日は何もせずに静かに過ごそうかな。 と思っていたら、、、。
「弘明君は腹を決めたかな?」 小百合が電話を掛けてきた。
「アグ、、、。」 「まだ決めてないの? あんた、それでも男なの? いい加減にしなさい‼」
小百合が大噴火した。 「分かった。 行くよ。」
「じゃあ明日は2時にあの門出待合せましょうね。 必ず来てね。」 「分かった。」
 電話を切ってからの俺は不安やら動揺やら絶望やら何やらいろんな思いが混じりあってきて落ち着いてられない気持ちを抱えている。
(美和は俺の話を聞いてくれるだろうか? その前に会ってくれるだろうか?) まあ俺が詮索したって分かるはずが無い。
 その頃、小百合は純からの話を聞いていた。 「私さあ、高橋先生に電話したのよ。」
「どうだった?」 「何とか最近は元気になったんだって。」
「そう。 他に何か言ってなかった?」 「数学、大変でしょう?って聞いてたわよ。」
「数学ねえ。 私も苦手だから何とも言えないな。」 「それでさ、サラッと弘明君のことも聞いてみたの。」
「何だって?」 「いろいろ有ったけど話さなきゃいけないことが有るんだって。」
「話さなきゃいけないこと? そうか分かった。」 「何か?」
「いえいえ、何でもないわ。」 小百合は電話を切ってから溜息を吐いた。
「妊娠してるんだな。 間違い無いわ。」 確信した小百合は翌日の訪問を楽しみにするのだった。

 13日の日曜日。 午後2時前に俺は小百合の家に着いた。
純も先に来ていて小百合と楽しそうに話している。 「さあ行こうか。」
二人は楽しそうに歩いて行く。 俺はその後ろをまるで刑場に向かう受刑者みたいな顔で歩いている。
「ねえねえ弘明君。 高橋先生と会うのは久しぶりなんでしょう?」 「あ、ああ。」
「元気出してよ。 久しぶりに会うんだからさあ。」 「でも、、、。」
「私が最初に入るから大丈夫よ。」 純はほんとに楽しそう。
(俺だけ入れなかったらどうしよう? なあ姉ちゃん。) 「そんなの知らないわよ。 あんたがやらかしたんでしょう? 責任取りなさいよね。」
 小百合の家から歩くこと40分。 美和が住んでいるマンションが見えてきた。
「いいマンションよねえ。 金持ちなんだなあ。」 純が頓狂な声を挙げる。
地下駐車場から白い車が出てきた。 そして、、、。
 正面のオートロックの前に俺たちは立った。 「番号はこれだよね。」
何度かコールが鳴って聞き覚えの有る声が聞こえた。 「高橋です。」
「吉村です。 遊びに来ました。」 「そう。 入って。」
 ガチャッという音がしてロックは解除された。 「さあ行くわよ。」
小百合は俺の袖を引っ張って中へ入っていく。 三人でエレベーターに乗る。
心臓は爆発しそうなくらいにドキドキしている。 (このまま帰りたい。)
「帰ったらダメだからね。 宏明君のために来たんだから。」 小百合が空かさず釘を刺してくる。
 やがてエレベーターのドアが開いた。 「よく来たわね。」
あの日と変わらぬ美和が目の前に立っていた。 「えーーーーー?」
「どうしたの?」 「いえいえ、先生のことだから部屋の中で待ってるんじゃないかって思ったんです。」
「そう? 久しぶりだからさ、何か嬉しくて。」 そう話す美和だけど一度も俺の顔を見ようとはしない。
(やっぱりダメだったか。) とはいっても小百合が俺の袖を引っ張る。
 美和の部屋に入れてもらった俺たちは居間のテーブルに三人で並んだ。 すると、、、。
「いいこと。 高橋先生の前できちんと謝るのよ。 そしてきちんと責任を取りなさいよね。」 小百合が俺に耳打ちしてきた。
 「先生、休んじゃってからずっと心配してました。」 「そう? ごめんね。」
「私、バレー部の副キャプテンだったから心配で、、、。」 「そうか。 純ちゃんは心配してくれてたんだ。」
「もちろん香澄ちゃんたちもそうですよ。」 「そうねえ。 数学も代ってもらったからね。」
 美和はカップを四つ用意してコーヒーを注いだ。 それから美和は俺の顔を見詰めた。
悲しそうな、それでいて幸せそうな、、、、。 何処となく複雑な顔をしている。
 「先生、レコード聞いてもいいですか?」 「いいわよ。 何を聞く?」
「そうだなあ。 オールドジャズなんかいいかも。」 「渋い所を突いてくるのねえ。 小百合ちゃんは。」
「これでもおばさんだから。」 「ブ、、、。」
おどける小百合に美和が噴き出した。 「たくさん有るから選んでもいいわよ。」
「はーーい。」 二人が隣の部屋に行ってしまうと美和は俺の前に座った。