俺の彼女は高校教師

 「何か幸せそうな顔してるなあ。」 (ドキ、、、。)
「何かいいことしたな?」 「やってねえよ。 何にも。」
「じゃあ何でニヤニヤしてるのさ?」 「それはだなあ、、、、。」
 家に帰ったらツアーを終えた姉ちゃんが土産を広げて旅の思い出を話してる所だった。 沖縄だったよね 確か?
「何をやったのさ?」 「何にもねえってば。」
「一緒にお風呂入ろうね。 久しぶりだから。」 甘い顔で囁いてくる。
拒否するわけにはいかない。 突っぱねると「ばらすぞ。」って言い出すからなあ。
 夕食を済ませて風呂に入っていると予言通りに姉ちゃんが入ってきた。 「溜まってるんでしょう?」
「無いよ。 無い無い。」 「嘘吐け。 顔に書いてあるぞ。 やりたいですって。」
「そんなこと無いよ。」 「そうかなあ?」
 笑いながら姉ちゃんは俺の膝に乗ってきた。 「好きにしていいわよ。」
またまた甘えるような声で言ってくるもんだから俺は我を忘れて萌えちゃった。 「やっぱり溜まってたんじゃない。 嘘吐き。」
「嘘吐きなんかじゃないってば。」 「まあいいわ。 ところで何かやったの?」
「なーーーんにもやってねえよ。 やるようなやつも居ないし。」 「あっそ。 寂しいなあ。」
 姉ちゃんはそう言うと俺に見えるように体を洗い始めた。 「何見てんのよ? 変態。」
「やらせといてそれは無いよなあ。」 「あんたが勝手にやったんでしょう?」
「自分から誘惑しておいて、、、。」 「ばらしちゃおうかなあ?」
「だからそれはダメだって。」 「じゃあおとなしくしてなさい。」
「しゃあねえなあ。」 俺はまたまた天井に目をやるのでした。

 翌10日は木曜日。 今日も就職組は面接が続きます。
3か所くらい応募してるやつも居るからねえ。 どれが当たるか分からない。
みんな合格して慌ててるやつも居たって言うけど、、、。 でも複雑だよなあ。
 取り敢えず銀行以外は応募したんだ。 金丸商事とスーパー斉藤、それにマルハイ石油のガソリンスタンド。
何が何だか分からないけどやってるうちに分かってくるんだろうなって思ってさ。 だって最初からみんな分かってるわけじゃないからさあ。
 不安でも何でも入ったらやるしか無いんだ。 退職代行なんて使ってる場合じゃないぜ。
あんなのを使うってことはさあ、会社も何も信用してませんって自白してるようなもんじゃねえか。 自分から飛び込んでおいてそれは卑怯だよ。
会社には会社のやり方ってやつが有る。 それをいちいち社員に合わせてたら手間ばかり掛かってどうしようもない。
そんな簡単なことも分からないんだね 現代人は。 最近の若いもんはって言いたくなる気持ちも分かるよ。
四つ上の先輩にも居るんだもん。 退職代行を使ったからその後は就職できなくなったって憐れな先輩が。
はっきり言って社会テロ。 刑務所に入れてもいいくらいの悪人だよ。
 キャリアを応援するために退職代行をやってますなんて会社も有るらしいけど表面だけでしょう? 辞めたらキャリアアップにはならないよ。
そんなことを考えながら面接を受けてます。 面接官も真剣だねえ。
そりゃそうさ。 使えるか使えないか見極めなきゃいけないんだからね。
ここで貧乏くじを引いちゃったら後後苦労するのは目に見えてる。 文句は言うくせに話を聞かないやつも居るんだしね。
 退職代行なんて使われようもんなら恨んでも恨み切れないよ。

 昼休みになった。 俺はいつものように図書館に逃げ込んで本を読み漁っております。
今日はまたまた誰も来ないみたい。 平和な一日になりそうだ。
放送が聞こえるなあ。 学芸委員会が話し合いをやるらしい。
そろそろ卒業文集の企画を出す頃だからなあ。 「何か書いてくれ。」って言ってくるんだろうなあ また。
去年もそうだった。 何を書いたかは忘れたけど。
 それでも今年は送り出される身なんだからなあ、それなりの物は書かなきゃなあ。
考えていたら昼休みが終わってしまった。 最初の頃は美和と並んで読んでたんだよな。
何か懐かしい気がする。 もう半年以上前なんだよ。
 教室に戻ってくると珍しく香澄が走り回っている。 (また何かやらかしたな?)
「待てーーーーー‼」 「アホか。 いい加減にしろよ。」
「許さないぞーーーー。」 どうやら香澄が追い掛けてるのは竜彦らしい。
なかなかお似合いじゃないか。 と思っていたら、、、。
ドン‼ 香澄が俺に突っ込んできた。
「何やってんだよ? 馬鹿。」 「竜彦君が悪いの。 私を馬鹿にするから。」
「だからって俺に突っ込まなくてもいいだろう?」 「逃げたから悪いのよ。」
そう言って香澄はまた竜彦を追い掛け始めた。 飽きないやつだなあ。
 それを小百合も冷たく見てましたわ。 (飽きない人ねえ。 香澄ってほんとに馬鹿だわ。)
俺がグラウンドを見詰めていると、、、。 「香澄ってさあ、竜彦君のほうが似合ってるんじゃない?」
「そうかなあ? 宏明君のほうが、、、。」 「いやいや竜彦君のほうがお似合いだって。」
(くだらねえなあ。 誰でもいいじゃん。 あいつに合えばいいんだから。) まだまだ優子たちの話は続いております。
小百合を見ると、、、。 「しょうもない話をするんじゃないわよ。 誰だっていいじゃない。 合えばいいんだから。」
その正論に二人は黙ってしまいましたわ。

 その頃美和は、、、? 産婦人科に来ております。
ここのところ生理が来なくて検査してもらうことにしたんだ。 まさかってことは無いよね?
 「高橋さん 中にお入りください。」 看護師に呼ばれて診察室へ、、、。
「どうされました?」 「ここ2か月ほど生理が来ないんです。」
「ほう、、、、。 それじゃあ検査してみますか。」 医師は超音波を当ててみた。
 しばらくして、、、、。 「高橋さん おめでとうございます。」
「え?」 「今は10周目ですね。 ということは予定日は8月中旬です。」
(地獄に嵌りそうだわ。 妊娠してたなんて、、、。) 産婦人科を出た美和はしばらく市内を走り回ることにした。
 このままマンションに帰る気にはなれない。 だからって弘明君に会いたいとも思えない。
どうしたらいいんだろう? 妊娠しちゃったのよ。
そんなことにはならないだろうって思ってたのに、、、。 どうしたらいいの?
 車を走らせながらふとスマホを覗いてみる。 誰からメールが来るわけも無く電話が掛かってくるわけでもないのに。
途中、立ち寄ったファミレスで昼食を食べてみる。 平日だからか静かなもんだ。
 車に戻るとまたまたエンジンを吹かす。 フラリト弘明君の家のほうに回ってみる。
会いたくないって思いながらどっかで求めている私が居るんだ。 勝手なもんよね。
 やっとマンションに帰ってきたのは午後6時ごろ。 駐車場もすっかり暗くなってて蛍光灯が眩しい。
部屋に入ってコーヒーを飲む。 押し倒されたのは居間の隅だった。
必死にもがいたのに何も出来なかった。 それからもうすぐ3か月。
この頃ではやっと食事もするようになって買い物にも出れるようになった。 でも学校へはまだまだ。
行けば弘明君に会っちゃうから行けないんだ。 いつか彼にも本当のことを話さなきゃいけないって思ってるのに。