俺の彼女は高校教師

 さあさあ27日から冬休みに突入だあ! だからって何もやることは無いんだけどなあ。
父さんも仕事納めで今夜は思い切り飲むらしい。 姉ちゃんはまたまたツアーでどっかに飛んで行ってる。
「今日はのんびり出来そうだな。」 夕食を済ませた俺はのんびりと風呂に浸かっております。
正月が来たって特別に何かやるわけでもなく、何か来るわけでもなく、何か貰えるわけでもない。 我が家は前からそうだった。
父さんが市役所の職員だからなのか、お年玉さえ気を使う始末。 おかげで貰ったことは無い。
母ちゃんも母ちゃんで選挙事務所で働いてるから金にはうるさくて、、、。 パンダ焼きには文句一つ言わないのになあ。
 だけど他の連中がお年玉を自慢し合っているのを黙って見てきたんだ。 悔しいって思いも無かったなあ。
そのままで18年が経とうとしてるわけだ。 ふーんって感じだよね。
 確かにさ、正月はどっか寂しい思いもしたよ。 でも小遣で文句を言ったことは無いな。
買いたい物は買えたんだし食べたい物も食べられたしね。 そして美和と会った。
 夏までは仲が良かったんだよなあ。 あの日さえ無かったら、、、。
年末ともなれば香澄たちも気忙しくなるらしい。 メールすら寄越さない。
夜になってもスマホは静かなまま。 待ち受けにしてるのはネットで拾った猫の写真。
あの日までは笑っている美和の写真を載せてたのにね。 勝手なもんだなあ。
その頃、美和は?

 不思議なのよ。 この頃は生理が来ないの。
年が明けたら調べてもらわないとまずいかもなあ。 病気なのかな?
それとももしかして妊娠したとか? そんなんじゃないわよね?
でもそうだったらどうしよう? 宏明君しか居ないのよ。
まさかねえ。 そんなことが有るわけ無いじゃん。
そう思い込んではみるんだけどどっかで幸せな気分に浸っている私が居る。 高校生の男の子だとはいっても確かに愛されてたのよ。
前の彼氏なんか比べ物にならないわ。 それくらいに愛されてたの。
それくらいに満たされてたのよね 私。 これからどうしよう?
年末を迎えてどっか空しくなっていく毎日に何かを感じていたのでありました。

 俺はというと次の日も部屋でゴロゴロしてます。 時々は待ち受けを美和に換えてみたりしながらね。
でもだからって自分から電話をする勇気も無い。 してどうするんだ?って思ってる。
 とは言いながらいつか美和が目の前に現れそうな気もする。 もうすぐ卒業なんだしさ。
 正月の話が聞こえてきた。 お節料理だとか年賀状だとか初詣だとか、、、。
我が家じゃあ有り触れた毎日がそこに有るだけ。 朝なんてカップラーメンが置いてあったりする。
しかも「一つじゃ足りないだろうから。」って三つくらい置いてあったりする。 そこまでは食わねえよ。
 初詣と言っても近所の小さな神社に詣でるくらいかなあ。 詣でるんだからいいだろうって感じ。
お御籤なんて引いたことは無いなあ。 凶の三連発を引いてからやめたんだ。
 お節なんぞは作ったことは無い。 昆布巻きと栗金団を買ってくるくらいかな。
餅なんぞはたまに餡餅を食べるくらいだよなあ。 父さんが子供の頃は豆餅を七輪で焼いたもんだって言うけど。
今じゃさあ家の外で火を使うのは消防署がうるさくて困るよ。 おかげで風情も何も有ったもんじゃない。
落ち葉焚きすら出来なくなったんだからね。 それだけ空気が乾いてるってことか。
 そりゃさあ、あっちでこっちでエアコンとヒーターが唸ってるんじゃあ空気も乾くわな。 馬鹿みたい。
自分たちでやらかしておいて「あれはダメだ。」「これはダメだ。」って偉そうに言ってくるんだもん。 何なんだよ?
おかげでさあどんど焼きも出来なくなっただろう。 お世話になったお札をゴミ袋に仕舞い込んで清掃車に持って行ってもらうのかい?
文かも伝統も壊れちまったなあ。 そんな見せ掛けだけの国でいいのかい?
 日本人は昔から法律も何も関係無く自由に繋がってたんだ。 それを法律が無惨に切り裂いちまった。
やたらめったらに法律を作りまくるもんだから気が付いたら身の回りを法律が取り囲んでる変な社会になっちまった。 社会のために法律が有る。
そのはずなのに今は法律のために社会が有る。 変な国になったもんだなあ。
 いくら総理大臣が可愛くても人気が有っても仕事をしていてもそこが変わらない限り日本はダメになると思うよ。

 さあ今日は晦日。 明日で今年も終わりだあ。
宝籤もレコード大賞も紅白もぜーーーーーんぜん興味なんか無い。 宝籤の当選番号を当てるのに中継なんかやってるけどアホらしくて見てられないよ。
それだったら寅さんを見てるほうがもーーーーーーーーっとまし。 そう思うなあ。
寅さんだって毎度だけどさあ、アホらしくて人間臭いじゃん。 いきなり家出するし喧嘩するし。
ついでにいつもヒロインには振られっぱなし。 一度としてうまくいったためしがない。
それが寅さんだったよね。 出来損ないのヒーローって感じ。
香澄もああなるのかなあ? 何か嫌だなあ。
「100パーセント 勇気で突撃するのーーーーーーーー‼」とか言ってきそうだからさあ。
 「こんにちは。」 あれあれ? 誰か来たぞ。
と思っていたら母ちゃんが話しながら二階に上がってきた。 「弘明、香澄ちゃんだよ。」
「ゲ、ほんとに来やがった。」 「何よ?」
「まあまあ弘明。 今年も終わりなんだから仲良くしてやってくれよ。」 「しゃあねえなあ。」
 寝て過ごそうと思っていたら香澄が飛び込んできた。 「やっぱりさあ寂しかったのよ 私。」
「あっそう。」 「冷たいなあ。 もっと聞いてよ。」
「今までさんざんに聞いてきたけどなあ。」 「これからも聞いてもらうわよ。」
「愚痴なら敏行に行ってくれよ。 あいつのほうが聞いてくれるだろう?」 「やっぱり弘明君じゃないとダメなのよ。」
「始まった。 これやり出すと終わらないんだよなあ こいつ。」 「何ですって? 私はエンドレステープじゃないのよ。」
「エンドレステープみたいなもんじゃん。 ずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと喋ってて。」 「いいでしょう? 昔からの仲なんだから。」
「それが困るんだよなあ。 小百合にでも聞いてもらうか?」 「やだやだ。 あんな単細胞。」
「言っとこうか。 小百合 大噴火するぞ。」 「ワワワ、それはダメ。」
「じゃあ黙ってなさいよ。」 「しょうがないなあ。」
 香澄は俺の机の上に目をやった。 「お菓子 食べていい?」
「じゃあ50万貰うわ。」 「何でよーーーーー?」
「ほらほら。 そうやるだろう。 だからお前は嫌なんだよ。」 「いいじゃんいいじゃん。 前からの付き合いなんだし。」
「魚屋の修業はどうしたんだよ?」 「卒業したらやるわ。」
「アホか。 あのお父さんが教えてくれると思うか?」 「大丈夫大丈夫。」
「甘いなあ。 こないだ、会ったんだけど修行しないやつは家を追い出すから言っといてくれって言ってたぞ。」 「うっそだあ。」
「ほんとだってばよ。 俺も怖かったんだからな。」 「ほんとに?」
「ほんとだよ。 だから今のうちに修行しといたほうがいいんじゃないのか?」 「そうねえ。 考えとくわ。」
 そこへ電話が掛かってきた。 「おー、魚屋だ。」
「ギク、、、。」 「もしもし、、、。」
「ああ、弘明君かい。 香澄は来てるよね?」 「居ますよ。」
「しょうがないなあ。 連れて帰るからじっとしてろって言っといてや。」 「分かりました。」
「ワワワ、怒ってる。」 「そら見ろ。 言った通りだろう。」
「分かった。 分かったわよ。」 そういうわけで、それから30分後に香澄は連れ戻されたのでした。
(まったくもって人騒がせなお嬢様だぜ。) ドッと疲れが出てしまった俺はそのまま寝てしまったのであーーーる。