「さて、今夜は何にしようかなあ?」 母ちゃんは玉葱を切りながら考えているらしい。
「どうせならさあ、切る前に考えてよ。」 「忙しいんだもん。 しょうがないじゃん。」
「ショウガなら冷蔵庫に入ってるけど。」 「え? ああ。 はいはい。」
母ちゃんの後姿を見ながら(美和も40過ぎたらこうなるのかなあ?)なんて考えてるんだ。 年は取りたくないなあ。
いつものようにテレビも点いていて姉ちゃんが居ないだけ。 でもなんか静かだなあ。
そりゃそうだろう。 あのお嬢様だって居ないんだから。 どんだけうるさかったかがよく分かる。
飯を食べ終わったら後は風呂に入るだけ。 父さんが俺を呼びに来たのは9時半ごろだった。
のんびりと湯に浸かる。 天井を仰いでみる。
小さい時からずーーーっと見てきた景色がそこに有る。 何も変わってない。
あの頃は母ちゃんとも風呂に入ってたんだよな。 いつ頃からかなあ 一人で入るようになったのは。
風呂から上がるとさすがに冷えるなあ。 ヒーターの前で猫になってまーす。
体が温まってきたから寝ようかな。 そう思いながらスマホを覗いてみた。
「メールが来てるぞ。」 それは、、、。
『弘明君 冬休みはどうするの?』
珍しく小百合が聞いてきたんだ。 こんなこと無かったのになあ。
『何にも予定は無いよ。 部屋でゴロゴロ。』
そう返信してから目を閉じた。 うーーーーん。
翌日は試験最終日。 やっと解放された俺たちは賑やかに騒いでおります。
「おいおい、静かにしろよ。」 「だってーーーーー、嬉しいんだもーーーーーん。」
「アホか。」 俺は騒いでる連中を放置して図書館へ行った。 「静かな場所でのんびりしたいな。」
そう思いながら本を読んでいると、、、。 「あらあら弘明君も来てたの?」ってミナッチが入ってきた。
「ミナッチ。」 「なあに? 私もたまには本を読もうかと思って、、、。」
そう言って本を取り出したミナッチは俺の隣に座るのですよ。 ミナッチも確かまだ独身だったはず。
静かな図書館で話すことも無く二人並んで本を読んでます。 そのうちにミナッチの太腿が触れてきた。
(思い出すなあ。 あの時を。) 本を読みながら一人幸せな気分に浸っている。
3時間目以降は何も無い。 3時までに帰ればいいんだから先生たちも何も言わない。
特に会議が入っている風でも無くミナッチも安心してるらしい。 読書に没頭中。
他に来る人も無く図書館は静かなまま。 なんか熱い物を感じるなあ。
ふと時計を見るといつの間にか12時を過ぎていた。 「そろそろ帰ろうかな。」
「帰る?」 「うん。 試験も終わったし何も無いしのんびりしたいなと思って。」
「そっか。 じゃあまた来週ね。」 俺は本を棚に戻すと図書館を出て行った。
ぼんやりと駅まで歩いてみる。 香澄も付いてこないしなんか拍子抜けした感じ。
「ねえねえ弘明君。 何処行くのよ?」 「え?」
香澄の声が聞こえたと思って振り向いたけど誰も居なかった。 (幻聴か?)
いつもの交差点で立ち止まってみる。 香澄はここにも居ない。
今まであんなにうるさく付きまとっていた香澄が居なくなるとこうも寂しくなる物なのか。 改めて香澄を思ってみる。
確かに悪いやつじゃなかった。 くっ付き過ぎただけなんだ。
でもやっぱり離れてみないと分からないもんだな。 駅に着いたぞ。
駅に着いたからと言って香澄が居るわけでもない。 今更探したいとも思わない。
いつも掃除をしている駅員もどっか不思議そうな眼で俺を見ている。 そりゃそうだよな、あんだけうるさかったやつが居ないんだから。
メールが来ることも無く電話が掛かってくることも無く電車に乗っても気を使うことも無い。
窓の外に目をやると冬支度を済ませた人たちが歩いて行くのが見えた。 (もうすくほんとに冬なんだな。)
ふと寂しくなってきた。 美和が居ないことを今さらのように思い出したんだ。
と言いながら魚屋の前を歩いてみる。 ドアは開いているけどお父さんは居ないようだ。
そこから俺の家に向かって歩いて行く。 香澄とも何度も歩いた道だ。
何度も何度も突っ込み合いながら歩いてたんだよなあ。 ずいぶん昔のように感じてしまう。
いつも喧嘩してたっけなあ。 喧嘩するほど仲が良いってみんなに言われてたっけ。
途中の自販機でレモンスカッシュを買う。 北風が吹いてる中でそれを飲みながら歩く。
もうすぐ初氷だの初霜だのってニュースが出てくるんだろうなあ。 雪は多いのかな?
宅配のトラックが通り過ぎていった。 就職することにはしたけど具体的にはどの仕事ってまだ決めてないんだよな。
店員もいいな。 強盗に狙われるのは御免被りたいけど。
機械関係は苦手だなあ。 油塗れになりたくない。
ガソリンスタンドは寒かったり暑かったり大変そうだしなあ。 資格を取るのも大変だし。
そんなことを言ってたら何にも出来ないじゃないか。 家業が有るわけでもないんだから。
かといって姉ちゃんや母ちゃんと一緒に働くのもどうかなあ?って思う。 旅行は嫌いじゃないけど。
あれこれ考えていたら家に着いちゃった。 「おっ帰りーーーー‼」
「ワワワ、何でお前が居るんだよ?」 「ダメだった?」
「ダメダメ。 はいはい。」 「ばらしちゃおうかなあ?」
「待て待て。 あの父さんに殺されるだろうがよ。」 「でしょう? だったらいいじゃない。」
「しゃあねえなあ。 今日だけだぞ。」 「ずーーーーーっとよ。」
相変わらず香澄はいい加減なんですわ。 何とかしてよ このお嬢様。
ついさっきまで澄ましてたかと思ったらいつものようにくっ付いてきましたわ。 「やっぱり離れられないのよねえ。 私。」
「まるでセメダインだな。」 「何ですって? オロナイン?」
「馬鹿。 どうやったらセメダインがオロナインになるんだよ? 考えてみろ。 馬鹿。」 「間違えちゃったわーーーー。 ああ恥ずかし。」
「恥ずかしいのは俺のほうなんだけどなあ。」 「いいのいいの。 宏明君は私の物なんだから。」
「へえへえ。 また始まったわ。」 「何が?」
「お前さあ、結局はお嬢様病 治らないんだなあ。」 「治ってますけど。」
「何処がだよ? お父さんにしこたまお説教されてもこれかい。」 「いいのよ。 私はこれなんだから。」
「お嬢様にはいい加減に疲れたんだけど。」 「だからさあ、お嬢様はやめてくれないかなあ?」
「だからさあ、いい加減にくっ付くのはやめてくれないかなあ?」 「真似しないで。」
「真似しないで。」 「馬鹿。」
「馬鹿。」 「もう。」
「もう。」 「いつまでやるのよ?」
「やめるまでやるのよ。」 「もういいわ。」
香澄はプイっと横を向いて床に寝転がった。 「俺んちで寝る気か?」
「私の家だもん。 お休み。」 「じゃあ、お父さんに来てもらおうな。」
「やだやだ。 それはやめて。」 「だろう? なら、、、。」
「分かった。 分かったわよ。」 今度は不貞腐れた顔で窓の外に目をやった。
と、そこに電話が、、、。 「ああ、もしもし。 何だ、小百合か。」
(ドキ、、、。) 「ああ、来てるよ。」
「ダメダメ。 来てるなんて言わないで。」 「言っちゃったもん。 遅いんだもん。」
「私のことなんかどうなってもいいのね?」 「どうにもしないけど。」
「だって小百合ちゃんが、、、。」 「ああ、あいつなら爆発してるよ。」
「うわーー、殺されるーーーー。」 そう言って香澄は慌てたように家から飛び出していった。
数分後、チャイムが鳴った。 「はいはーーーい。」
「こんにちは。 香澄ちゃんは居るかなあ?」 「お前が電話してくるから飛んで逃げたよ。」
「あらそう。 残念だなあ。」 「よっぽど怖いみたいだぜ。 あいつ。」
「そうなの? そんなに怖いことしてないけどなあ。」 「お前が言うことってけっこうえげつないからなあ。」
「そうかなあ? ちょっと厳しく言っただけなんだけど。」 「厳し過ぎだよ。」
「そうかなあ?」 「まあ突っ立ってるのも寒いだろう。 入れよ。」
「うん。 ありがと。」
「どうせならさあ、切る前に考えてよ。」 「忙しいんだもん。 しょうがないじゃん。」
「ショウガなら冷蔵庫に入ってるけど。」 「え? ああ。 はいはい。」
母ちゃんの後姿を見ながら(美和も40過ぎたらこうなるのかなあ?)なんて考えてるんだ。 年は取りたくないなあ。
いつものようにテレビも点いていて姉ちゃんが居ないだけ。 でもなんか静かだなあ。
そりゃそうだろう。 あのお嬢様だって居ないんだから。 どんだけうるさかったかがよく分かる。
飯を食べ終わったら後は風呂に入るだけ。 父さんが俺を呼びに来たのは9時半ごろだった。
のんびりと湯に浸かる。 天井を仰いでみる。
小さい時からずーーーっと見てきた景色がそこに有る。 何も変わってない。
あの頃は母ちゃんとも風呂に入ってたんだよな。 いつ頃からかなあ 一人で入るようになったのは。
風呂から上がるとさすがに冷えるなあ。 ヒーターの前で猫になってまーす。
体が温まってきたから寝ようかな。 そう思いながらスマホを覗いてみた。
「メールが来てるぞ。」 それは、、、。
『弘明君 冬休みはどうするの?』
珍しく小百合が聞いてきたんだ。 こんなこと無かったのになあ。
『何にも予定は無いよ。 部屋でゴロゴロ。』
そう返信してから目を閉じた。 うーーーーん。
翌日は試験最終日。 やっと解放された俺たちは賑やかに騒いでおります。
「おいおい、静かにしろよ。」 「だってーーーーー、嬉しいんだもーーーーーん。」
「アホか。」 俺は騒いでる連中を放置して図書館へ行った。 「静かな場所でのんびりしたいな。」
そう思いながら本を読んでいると、、、。 「あらあら弘明君も来てたの?」ってミナッチが入ってきた。
「ミナッチ。」 「なあに? 私もたまには本を読もうかと思って、、、。」
そう言って本を取り出したミナッチは俺の隣に座るのですよ。 ミナッチも確かまだ独身だったはず。
静かな図書館で話すことも無く二人並んで本を読んでます。 そのうちにミナッチの太腿が触れてきた。
(思い出すなあ。 あの時を。) 本を読みながら一人幸せな気分に浸っている。
3時間目以降は何も無い。 3時までに帰ればいいんだから先生たちも何も言わない。
特に会議が入っている風でも無くミナッチも安心してるらしい。 読書に没頭中。
他に来る人も無く図書館は静かなまま。 なんか熱い物を感じるなあ。
ふと時計を見るといつの間にか12時を過ぎていた。 「そろそろ帰ろうかな。」
「帰る?」 「うん。 試験も終わったし何も無いしのんびりしたいなと思って。」
「そっか。 じゃあまた来週ね。」 俺は本を棚に戻すと図書館を出て行った。
ぼんやりと駅まで歩いてみる。 香澄も付いてこないしなんか拍子抜けした感じ。
「ねえねえ弘明君。 何処行くのよ?」 「え?」
香澄の声が聞こえたと思って振り向いたけど誰も居なかった。 (幻聴か?)
いつもの交差点で立ち止まってみる。 香澄はここにも居ない。
今まであんなにうるさく付きまとっていた香澄が居なくなるとこうも寂しくなる物なのか。 改めて香澄を思ってみる。
確かに悪いやつじゃなかった。 くっ付き過ぎただけなんだ。
でもやっぱり離れてみないと分からないもんだな。 駅に着いたぞ。
駅に着いたからと言って香澄が居るわけでもない。 今更探したいとも思わない。
いつも掃除をしている駅員もどっか不思議そうな眼で俺を見ている。 そりゃそうだよな、あんだけうるさかったやつが居ないんだから。
メールが来ることも無く電話が掛かってくることも無く電車に乗っても気を使うことも無い。
窓の外に目をやると冬支度を済ませた人たちが歩いて行くのが見えた。 (もうすくほんとに冬なんだな。)
ふと寂しくなってきた。 美和が居ないことを今さらのように思い出したんだ。
と言いながら魚屋の前を歩いてみる。 ドアは開いているけどお父さんは居ないようだ。
そこから俺の家に向かって歩いて行く。 香澄とも何度も歩いた道だ。
何度も何度も突っ込み合いながら歩いてたんだよなあ。 ずいぶん昔のように感じてしまう。
いつも喧嘩してたっけなあ。 喧嘩するほど仲が良いってみんなに言われてたっけ。
途中の自販機でレモンスカッシュを買う。 北風が吹いてる中でそれを飲みながら歩く。
もうすぐ初氷だの初霜だのってニュースが出てくるんだろうなあ。 雪は多いのかな?
宅配のトラックが通り過ぎていった。 就職することにはしたけど具体的にはどの仕事ってまだ決めてないんだよな。
店員もいいな。 強盗に狙われるのは御免被りたいけど。
機械関係は苦手だなあ。 油塗れになりたくない。
ガソリンスタンドは寒かったり暑かったり大変そうだしなあ。 資格を取るのも大変だし。
そんなことを言ってたら何にも出来ないじゃないか。 家業が有るわけでもないんだから。
かといって姉ちゃんや母ちゃんと一緒に働くのもどうかなあ?って思う。 旅行は嫌いじゃないけど。
あれこれ考えていたら家に着いちゃった。 「おっ帰りーーーー‼」
「ワワワ、何でお前が居るんだよ?」 「ダメだった?」
「ダメダメ。 はいはい。」 「ばらしちゃおうかなあ?」
「待て待て。 あの父さんに殺されるだろうがよ。」 「でしょう? だったらいいじゃない。」
「しゃあねえなあ。 今日だけだぞ。」 「ずーーーーーっとよ。」
相変わらず香澄はいい加減なんですわ。 何とかしてよ このお嬢様。
ついさっきまで澄ましてたかと思ったらいつものようにくっ付いてきましたわ。 「やっぱり離れられないのよねえ。 私。」
「まるでセメダインだな。」 「何ですって? オロナイン?」
「馬鹿。 どうやったらセメダインがオロナインになるんだよ? 考えてみろ。 馬鹿。」 「間違えちゃったわーーーー。 ああ恥ずかし。」
「恥ずかしいのは俺のほうなんだけどなあ。」 「いいのいいの。 宏明君は私の物なんだから。」
「へえへえ。 また始まったわ。」 「何が?」
「お前さあ、結局はお嬢様病 治らないんだなあ。」 「治ってますけど。」
「何処がだよ? お父さんにしこたまお説教されてもこれかい。」 「いいのよ。 私はこれなんだから。」
「お嬢様にはいい加減に疲れたんだけど。」 「だからさあ、お嬢様はやめてくれないかなあ?」
「だからさあ、いい加減にくっ付くのはやめてくれないかなあ?」 「真似しないで。」
「真似しないで。」 「馬鹿。」
「馬鹿。」 「もう。」
「もう。」 「いつまでやるのよ?」
「やめるまでやるのよ。」 「もういいわ。」
香澄はプイっと横を向いて床に寝転がった。 「俺んちで寝る気か?」
「私の家だもん。 お休み。」 「じゃあ、お父さんに来てもらおうな。」
「やだやだ。 それはやめて。」 「だろう? なら、、、。」
「分かった。 分かったわよ。」 今度は不貞腐れた顔で窓の外に目をやった。
と、そこに電話が、、、。 「ああ、もしもし。 何だ、小百合か。」
(ドキ、、、。) 「ああ、来てるよ。」
「ダメダメ。 来てるなんて言わないで。」 「言っちゃったもん。 遅いんだもん。」
「私のことなんかどうなってもいいのね?」 「どうにもしないけど。」
「だって小百合ちゃんが、、、。」 「ああ、あいつなら爆発してるよ。」
「うわーー、殺されるーーーー。」 そう言って香澄は慌てたように家から飛び出していった。
数分後、チャイムが鳴った。 「はいはーーーい。」
「こんにちは。 香澄ちゃんは居るかなあ?」 「お前が電話してくるから飛んで逃げたよ。」
「あらそう。 残念だなあ。」 「よっぽど怖いみたいだぜ。 あいつ。」
「そうなの? そんなに怖いことしてないけどなあ。」 「お前が言うことってけっこうえげつないからなあ。」
「そうかなあ? ちょっと厳しく言っただけなんだけど。」 「厳し過ぎだよ。」
「そうかなあ?」 「まあ突っ立ってるのも寒いだろう。 入れよ。」
「うん。 ありがと。」



