それから一週間が過ぎました。 現在12月5日。 何と木曜日。
二学期の期末考査の最中です。 昼前に終わったからのんびり駅まで歩いてきた。
香澄はというといつになく静かなんだわ。 怖いくらいにおとなしい。
尻尾を振って付いてくることも無くなったし飛び掛かってくることも無い。 怖いくらいに静かなんだ。
最中を差し出しても「ありがとう。」って言うだけ。 何がどうしてどうなった?
そんなもんだから揶揄うわけにもいかず、俺も遠くからじっと見詰めるだけ。 物足りないなあ。
お父さんと小百合のお説教がかなり効いたらしいな。 それでいいそれでいい。
電車が来ても突っかかってくることも無く静かなもんですわ。 今まで何でこうならなかったんだろう? 俺はぼんやり窓の外を見ております。
香澄はスマホを弄っております。 それだけは変わらないんだなあ。
すると、、、。 「弘明君さあ、私のことは嫌いなのよね?」って聞いてきた。
「いきなり何だよ?」 「嫌いだったのよね?」
「それがどうした?」 「冷たいなあ。」
「好きだったらどうする?」 「どうもしないかも。」
「何だいそりゃ? 期待させといて。」 「そっか。 着いたから降りるね。」
香澄は呆気なくそう言うと澄ました顔で降りて行った。 (変わったぞ。)
不思議な気持ちに包まれて商店街を歩く。 もう冬支度をしてるなあ。
いつものようにパンダ焼きを買って食べながら歩いている。 パトカーがサイレンを鳴らしながら通り過ぎて行った。
いつもなら試験期間も関係無く香澄が絡み付いてきてやいのやいのとうるさいんだけど、あれ以来どうも香澄がおとなしくて調子が出ない。 俺までおとなしくなってる。
「弘明君さあ、最近どうしたの?」ってミナッチにまで聞かれたくらいだからなあ。
電話が掛かってきた。 「誰なんだよ?」
「あなたの郵便貯金口座が不正に扱われています。 相談員とお話を、、、。」 「うっせえな。 俺はまだ郵貯の口座なんて持ってねえぞ。」
スマホを切ったはいいけれどまたまた電話が掛かってきた。 「今度は誰だよ?」
「ああ、弘明君? あのさあ、、、。」 「何だ。 律子か。」
「律子か、、、は無いでしょう? 相談してるんだから。」 「ごめんごめん。 変な電話の後だからさあ。」
歩きながらスマホで話している。 目の前に供養塔が見える所にまでやってきた。
天気はいい。 あいつが飛んできてもおかしくないくらいに天気がいい。
ここ12年、こんな日は無かったなあ。 何で香澄は俺にくっ付いてたんだろう?
あの日、虐められてるのを助けたからかなあ? いやいや、それにしてもなあ。
香澄を虐めてたやつってのは小3の時に茨城から引っ越してきたやつだった。 父さんが転勤族らしく手3年で引っ越していったけど。
昼休み、遊びに行って教室に戻ったら香澄が泣いてたんだ。 「どうしたんだ?」
「矢野君が虐めるの。」 「矢野か。 ほっとけよ。」
「でも、、、。」 話してる所に矢野が来た。
「お前、何やってんだよ?」 「は? 何にもしてねえけど。」
「じゃあ何で香澄が泣いてるんだよ?」 「知らねえよ。 俺じゃねえってば。」
「矢野君 さっきさあ、香澄を叩いてなかった?」 「知らねえよ。」
小百合も不思議そうな顔で矢野を追及してたっけ。 でも次の日もやっぱり香澄は泣いてた。
頭に来たからいつでも香澄と一緒に居ることにしたんだ。 矢野は舌打ちばかりしてたっけ。
「ねえねえ矢野君。 どうしたの?」 「何でもないよ。 何でもねえってば。」
「じゃあ何で舌打ちしてたの?」 「分かった。 香澄ちゃんを叩けないから悔しいんでしょう?」
「そんなんじゃないってば。」 焦った矢野は教室から飛び出していった。 「やっぱりか。」
その後、担任からもきつくお灸を据えられた矢野はおとなしくなったんだ。 その頃からだよなあ。
香澄がうちに来るようになったのは。 もちろん、その前から知ってはいたんだけどね。
それで今日までくっ付いてきたわけだ。 長かったな。
家に帰ってきてパンダ焼きの余ったのをテーブルに置いておく。 俺は部屋でのんびりしようかな。
香澄がいきなり駆け込んでくることも無く長々と電話してくることも無い。 こっちから行くことも無ければ電話することも無い。
寒くなってきた部屋でファンヒーターを点ける。 こういう時には必ず香澄が隣に居た。
「寒くなったねえ。」とか「暖めてよ。」とか言ってきたっけ。 想い出になっちまったのかな?
考えて見りゃあ勝手なもんだよなあ。 くっ付いてる時にはうるさいのなんのって文句を言っておいて、居なくなると寂しいって泣いてるんだからなあ。
あと三か月もすれば卒業するんだぜ。 俺も香澄も就職するんだ。
そうすればこれまでみたいに会いたくても会えなくなる。 そのうち互いに結婚したりしてなあ。
子供が、嫁さんが、旦那がって忙しく走り回るようになるんだ。 そうなったら喧嘩してたことだって忘れちまうかもしれない。
そんな時にさあ「別れなきゃよかったなあ。」なんて言いたくないよな。 美和だってどうなってるか分からないんだし。
そういえば美和が休んで一か月。 どうしてるんだろうな?
ってか、俺が原因を作ったんだ。 心配できるような立場じゃないよな。
夢雨にだって恨まれてるんだろうな きっと。 死んでしまいたい。
そんなことを考えていたら寝ちまっていたらしい。 サウナのように熱くなった部屋の中で俺は目を覚ました。
「熱いなあ、ちきしょうめ。」 ヒーターを消してドアを開ける。
そしたら姉ちゃんが不思議そうな顔で入ってきた。 「どうしたんだよ?」
「真昼間から居るから変だなあって思って。」 「期末考査の最中だからだよ。」
「そっか。 ずる休みじゃなかったんだ。」 「姉ちゃんじゃないから。」
「何だって? 香澄ちゃんや美和とやったこと話しちゃおうかなあ?」 「待て待て。 それはダメだって言ってるだろう?」
「じゃあ私を可愛がってよね。」 そう言って姉ちゃんは床に寝転がるのであります。
つまりは「抱いてくれ。」ってことなんでありますよ。 真昼間からやらせるなっつうの。
とはいうものの、秘密を握られているからには従うしかないんだよなあ。 何とかしてくれよ 田村さん。
試験勉強もそこそこに姉ちゃんといいことしてシャワーを浴びてます。 「良かったわよ。 宏明。」
耳元で囁くからくすぐったくて堪んない。 「もっともっと食べてね。 美味しいんだから。」
「はいはい。」 「ああ、気乗りしない返事だなあ。 ばらしちゃうぞ。」
「待て待て。 それとこれは別だろうがよ。」 「お、な、じ、よ。 宏明君。」
そう言いながら悩ましくキスをしてくるんだ。 この姉ちゃん。
だからさあ、もう一回萌えちゃった。 「激しいわねえ。 疲れちゃうじゃない。」
「自分から乗ってきてか?」 「何だって? ばらしちゃうけどいいのかなあ?」
「分かった。 分かったから。」 姉ちゃんはクスクス笑いながら部屋に戻っていくのでありますよ。
(あんちきしょう、いつか仕返しするからな‼) でもあの攻撃には耐えられないんだよなあ。
さてさて今年最後の勉強をしますか。 英語も数学も危ないんだよなあ。
卒業するって時にこれじゃあまずいよなあ。 思い切って小百合を誘ってみる。
「数学か。 私も大問題なのよ。 よろしくやりましょう。」 それでまあ小百合と律子と三人で数学を、、、。
その頃、香澄はというと今日ばかりは修行も休んで勉強してます。 家に帰ったら部屋に籠もりっきり。
教科書とノートを睨めっこしながら溜息を吐いたり切れてみたり、、、。 まるで受験生。
おまけに来年の進路も考えながらだから頭の中は数字がいっぱい。 最悪の場合は家業を継ぐことになりそうで、、、。
継いでしまったら今迄みたいに釣り堀遊びは出来なくなるんだよなあ。 売り物だからさあ。
「楽しかったなあ。 釣り堀遊びも。」 河豚だ、鰤だ、カサゴだって釣って捌いてもらったんだっけ。
そんなことを思い出しながらノートを捲るのでした。
二学期の期末考査の最中です。 昼前に終わったからのんびり駅まで歩いてきた。
香澄はというといつになく静かなんだわ。 怖いくらいにおとなしい。
尻尾を振って付いてくることも無くなったし飛び掛かってくることも無い。 怖いくらいに静かなんだ。
最中を差し出しても「ありがとう。」って言うだけ。 何がどうしてどうなった?
そんなもんだから揶揄うわけにもいかず、俺も遠くからじっと見詰めるだけ。 物足りないなあ。
お父さんと小百合のお説教がかなり効いたらしいな。 それでいいそれでいい。
電車が来ても突っかかってくることも無く静かなもんですわ。 今まで何でこうならなかったんだろう? 俺はぼんやり窓の外を見ております。
香澄はスマホを弄っております。 それだけは変わらないんだなあ。
すると、、、。 「弘明君さあ、私のことは嫌いなのよね?」って聞いてきた。
「いきなり何だよ?」 「嫌いだったのよね?」
「それがどうした?」 「冷たいなあ。」
「好きだったらどうする?」 「どうもしないかも。」
「何だいそりゃ? 期待させといて。」 「そっか。 着いたから降りるね。」
香澄は呆気なくそう言うと澄ました顔で降りて行った。 (変わったぞ。)
不思議な気持ちに包まれて商店街を歩く。 もう冬支度をしてるなあ。
いつものようにパンダ焼きを買って食べながら歩いている。 パトカーがサイレンを鳴らしながら通り過ぎて行った。
いつもなら試験期間も関係無く香澄が絡み付いてきてやいのやいのとうるさいんだけど、あれ以来どうも香澄がおとなしくて調子が出ない。 俺までおとなしくなってる。
「弘明君さあ、最近どうしたの?」ってミナッチにまで聞かれたくらいだからなあ。
電話が掛かってきた。 「誰なんだよ?」
「あなたの郵便貯金口座が不正に扱われています。 相談員とお話を、、、。」 「うっせえな。 俺はまだ郵貯の口座なんて持ってねえぞ。」
スマホを切ったはいいけれどまたまた電話が掛かってきた。 「今度は誰だよ?」
「ああ、弘明君? あのさあ、、、。」 「何だ。 律子か。」
「律子か、、、は無いでしょう? 相談してるんだから。」 「ごめんごめん。 変な電話の後だからさあ。」
歩きながらスマホで話している。 目の前に供養塔が見える所にまでやってきた。
天気はいい。 あいつが飛んできてもおかしくないくらいに天気がいい。
ここ12年、こんな日は無かったなあ。 何で香澄は俺にくっ付いてたんだろう?
あの日、虐められてるのを助けたからかなあ? いやいや、それにしてもなあ。
香澄を虐めてたやつってのは小3の時に茨城から引っ越してきたやつだった。 父さんが転勤族らしく手3年で引っ越していったけど。
昼休み、遊びに行って教室に戻ったら香澄が泣いてたんだ。 「どうしたんだ?」
「矢野君が虐めるの。」 「矢野か。 ほっとけよ。」
「でも、、、。」 話してる所に矢野が来た。
「お前、何やってんだよ?」 「は? 何にもしてねえけど。」
「じゃあ何で香澄が泣いてるんだよ?」 「知らねえよ。 俺じゃねえってば。」
「矢野君 さっきさあ、香澄を叩いてなかった?」 「知らねえよ。」
小百合も不思議そうな顔で矢野を追及してたっけ。 でも次の日もやっぱり香澄は泣いてた。
頭に来たからいつでも香澄と一緒に居ることにしたんだ。 矢野は舌打ちばかりしてたっけ。
「ねえねえ矢野君。 どうしたの?」 「何でもないよ。 何でもねえってば。」
「じゃあ何で舌打ちしてたの?」 「分かった。 香澄ちゃんを叩けないから悔しいんでしょう?」
「そんなんじゃないってば。」 焦った矢野は教室から飛び出していった。 「やっぱりか。」
その後、担任からもきつくお灸を据えられた矢野はおとなしくなったんだ。 その頃からだよなあ。
香澄がうちに来るようになったのは。 もちろん、その前から知ってはいたんだけどね。
それで今日までくっ付いてきたわけだ。 長かったな。
家に帰ってきてパンダ焼きの余ったのをテーブルに置いておく。 俺は部屋でのんびりしようかな。
香澄がいきなり駆け込んでくることも無く長々と電話してくることも無い。 こっちから行くことも無ければ電話することも無い。
寒くなってきた部屋でファンヒーターを点ける。 こういう時には必ず香澄が隣に居た。
「寒くなったねえ。」とか「暖めてよ。」とか言ってきたっけ。 想い出になっちまったのかな?
考えて見りゃあ勝手なもんだよなあ。 くっ付いてる時にはうるさいのなんのって文句を言っておいて、居なくなると寂しいって泣いてるんだからなあ。
あと三か月もすれば卒業するんだぜ。 俺も香澄も就職するんだ。
そうすればこれまでみたいに会いたくても会えなくなる。 そのうち互いに結婚したりしてなあ。
子供が、嫁さんが、旦那がって忙しく走り回るようになるんだ。 そうなったら喧嘩してたことだって忘れちまうかもしれない。
そんな時にさあ「別れなきゃよかったなあ。」なんて言いたくないよな。 美和だってどうなってるか分からないんだし。
そういえば美和が休んで一か月。 どうしてるんだろうな?
ってか、俺が原因を作ったんだ。 心配できるような立場じゃないよな。
夢雨にだって恨まれてるんだろうな きっと。 死んでしまいたい。
そんなことを考えていたら寝ちまっていたらしい。 サウナのように熱くなった部屋の中で俺は目を覚ました。
「熱いなあ、ちきしょうめ。」 ヒーターを消してドアを開ける。
そしたら姉ちゃんが不思議そうな顔で入ってきた。 「どうしたんだよ?」
「真昼間から居るから変だなあって思って。」 「期末考査の最中だからだよ。」
「そっか。 ずる休みじゃなかったんだ。」 「姉ちゃんじゃないから。」
「何だって? 香澄ちゃんや美和とやったこと話しちゃおうかなあ?」 「待て待て。 それはダメだって言ってるだろう?」
「じゃあ私を可愛がってよね。」 そう言って姉ちゃんは床に寝転がるのであります。
つまりは「抱いてくれ。」ってことなんでありますよ。 真昼間からやらせるなっつうの。
とはいうものの、秘密を握られているからには従うしかないんだよなあ。 何とかしてくれよ 田村さん。
試験勉強もそこそこに姉ちゃんといいことしてシャワーを浴びてます。 「良かったわよ。 宏明。」
耳元で囁くからくすぐったくて堪んない。 「もっともっと食べてね。 美味しいんだから。」
「はいはい。」 「ああ、気乗りしない返事だなあ。 ばらしちゃうぞ。」
「待て待て。 それとこれは別だろうがよ。」 「お、な、じ、よ。 宏明君。」
そう言いながら悩ましくキスをしてくるんだ。 この姉ちゃん。
だからさあ、もう一回萌えちゃった。 「激しいわねえ。 疲れちゃうじゃない。」
「自分から乗ってきてか?」 「何だって? ばらしちゃうけどいいのかなあ?」
「分かった。 分かったから。」 姉ちゃんはクスクス笑いながら部屋に戻っていくのでありますよ。
(あんちきしょう、いつか仕返しするからな‼) でもあの攻撃には耐えられないんだよなあ。
さてさて今年最後の勉強をしますか。 英語も数学も危ないんだよなあ。
卒業するって時にこれじゃあまずいよなあ。 思い切って小百合を誘ってみる。
「数学か。 私も大問題なのよ。 よろしくやりましょう。」 それでまあ小百合と律子と三人で数学を、、、。
その頃、香澄はというと今日ばかりは修行も休んで勉強してます。 家に帰ったら部屋に籠もりっきり。
教科書とノートを睨めっこしながら溜息を吐いたり切れてみたり、、、。 まるで受験生。
おまけに来年の進路も考えながらだから頭の中は数字がいっぱい。 最悪の場合は家業を継ぐことになりそうで、、、。
継いでしまったら今迄みたいに釣り堀遊びは出来なくなるんだよなあ。 売り物だからさあ。
「楽しかったなあ。 釣り堀遊びも。」 河豚だ、鰤だ、カサゴだって釣って捌いてもらったんだっけ。
そんなことを思い出しながらノートを捲るのでした。



