俺の彼女は高校教師

 次の日、澤山台の駅を降りると、、、。 「弘明君、ごめんね。」って香澄が言ってきた。
「どうしたんだよ?」 「昨日、反対の電車に乗っちゃってお父さんに迎えに来てもらったの。 それで話してたら思い切り怒られたんだ。」
「そう。」 今日は不思議にも静かな香澄である。
律子も小百合も気を使っているようでなかなか声を掛けないでいる。 「ハックション‼」
 そんな静かな所で香澄がド派手なくしゃみをしたからみんなは思わず顔を見合わせてしまった。 もうすぐ12月だ。
コンビニの通りにもクリスマスファンタジーナイトの有んないが下がるようになった。 「クリスマスか、、、。」
「うちは苦しみます、、、だけどねえ。」 「みんなそうだってば。」
「そうかなあ? 宏明君は違うんじゃないの?」 「何でだよ?」
「お父さん 役所の人だもんねえ。」 「そっか。 ボーナスもたくさん出るんだろうなあ。」
「香澄はどうなのよ?」 「何も無いよ。」
「そうかなあ? そのようには見えないけどなあ。」 「うちも苦しいから。」
「じゃあ来年から香澄も働いて親孝行しなきゃねえ。」 「うーーーん。」
困ったような顔をして俺に助けを求めてくるんだ。 まったくもう、、、。
 1時間目が終わってのんびりしていると、、、。 「ねえねえ香澄、昨日は何処まで行ってたの?」
小百合が香澄に聞いてきた。 「高松が原。」
「え? それって何処?」 「おいおい、聞いといてそれかよ。」
「だって知らないんだもん。」 「高松が原って言えば澤山台から40分くらい行った所だよ。」
「そっちって鶯じゃないの?」 「ちゃうちゃう。 反対側だよ。」
「えーーーー? 反対に行っちゃったのーーーーー?」 「だからさあ小百合、驚き過ぎだってばよ。」
「ごめんごめん。 昨日もこれでやらかしたんだよね。」 「まったくもう、、、。 ちっとは香澄のことを考えてやれよ。」
「すんまへーん。」 「ドタ、、、。」
「何よ?」 「小百合、いつから芸人になったんだ?」
「分かんない。 宏明君を見てたらそうなっちゃったのよ。」 「俺のせいだって。」
 さあさあ2時間目は蟻んこの、、、いやいや有村先生の音楽ですわよーーーー。 「あんたたちももうすぐ卒業なのよねえ?」
「そうでーす。」 「返事だけはいいわねえ。 成績は悪いのに。」
「性格と成績は別だから。」 「一本。」
「宮本君。 通知表 覚悟しときなさいよ。」 「ほらほら鬼を怒らせた。」
「田川君。 廊下に立ってなさい。」 やられたなあ。

 昼休み、今日も美和が居ない図書館で一人寂しく本を読んでおります。 (美和、どうしてるかなあ?)
そこへ誰かが入ってきた。 (誰だろう?)
取り敢えず気に留めずに本を読んでいると俺の隣に誰かが座った。 んで悩ましく太腿を触れさせてくる。
 感じない振りをしていると、、、。 そいつが脇を擽ってきた。
「ギャハハハハ、何すんだよ?」 「やっと反応した。」
「何だ、香澄か。」 「何だは無いでしょう? 彼女に向かって。」
「小百合と遊んでるのかと思ったら、、、。」 「遊ばないわよ。 あんなの。」
「そんなこと言っていいのかなあ?」 「何よ?」
俺が香澄を揶揄っていると棚の陰から小百合がひょっこり顔を出した。 「あんなのって言ったわよね さっき?」
「ワワワワワ、小百合ちゃん。」 「またお説教しようか?」
「やだやだ。 いいからいいから。」 香澄が焦るのを見ながら俺も小百合も思い切り吹き出してしまった。
「もう。 二人とも性格悪いなあ。」 「しょうがないじゃん。 生まれつきなんだから。」
「そうそう。 お嬢様には勝てませんわ。」 「だからさあ、お嬢様はやめてって前から言ってるでしょう?」
「お嬢様をやめてくれたら言わないわよ。 香澄ちゃん。」 「ああもう、、、。」
 こんな調子でいつもの香澄を虐めているのであります。 俺って悪い子?
「小百合は何しに来たの?」 「何だと思う?」
「うーーーん、弘明君を誘惑しに来たとか?」 「あのねえ、あんたじゃないのよ。」
「ごめんごめん。 んで、何しに来たの?」 「何でもいいじゃない。 ほっといてよ。」
小百合はプイっと横を向いてしまった。 「また怒らせたのか。」
「または無いでしょう? または。」 「お前の場合は「また」なんだよ。」
「何でよ?」 「何でもつんでもいいの。 静かにしてくれない?」
「弘明君が、、、。」 「誰が彼がじゃないの。 あんたがよ。」
「小百合、、、。」 「あんたねえ、ちっとは静かにしたらどうなのよ? いちいちくだらないことでワーワーキャーキャーうるさいの。」
「でも、、、。」 「でももだもも無いの。 場所と時間を考えてよね 少しは。」
小百合はそれだけ言ってしまうと借りた本を持って図書館を出て行った。

 その後が大変なんですわ。 香澄は妙に黙り込んでしまって授業中も俯いたままなんだわ。
「やることが極端すぎるだろう。」 「でも、、、。」
「それだから小百合に突っ込まれるんだぞ。 分かってないだろう?」 「うん。」
「正直でよろしい。」 「偉そうに、、、。」
「また小百合を呼ぼうか?」 「いいわよいいわよ。 お説教はたくさん。」
 こうして香澄は小百合から逃げ回るんですわ。 それを律子たちはボーっと眺めてます。
その日も放課後になりまして、いつものように昇降口へ来ると、、、。 香澄が靴を履き替えて誰かを待っている。
「よう、香澄様、誰かお待ちですかな?」 わざとらしく聞いてみる。
「弘明君ですわ。」 「ほう、何で?」
「好きだからよ。」 「へえ、嫌いだったらどうする?」
「それでもいいの。 付いてくんだもん。」 「始まった。」
やっぱりお嬢様はお嬢様なんだなあ。 いつか鰤でも持って挨拶に来ねえだろうなあ?
「家族にしてください。」とか真面目ーーーーーーーーーーな顔されたら父さんも弱いからなあ。
 いつもとは違って黙ったまま歩いております。 やけに緊張するんだけどなあ。
交差点が見えてきた。 俺が右に曲がると、、、。
いつもはそのまま駅に行ってしまう香澄が付いてきた。 「どうしたんだよ?」
「ずっと傍に居たいの。」 「いっつもくっ付いてるのにか?」
「そんなんじゃないもん。 好きだからなんだもん。」 「はいはい。 お嬢様。」
「だからさあ、いつになったら、、、。」 「はい、最中。」
「あ、う、、、、。」 振り向いて差し出した最中は香澄の顔面に直撃していた。
「何すんのよーーーーー?」 「いいじゃんいいじゃん。 手が滑ったんだよ。」
「滑って顔面直撃するかーーーーー?」 「したらどうするんだよ?」
「どうするって、、、、。 そんなこと言われても困るわよ。」 「いつもの調子が出てきたな?」
「何よ? いつもの調子って? ねえねえねえ‼」 やっぱり俺たちって喧嘩してるほうがいいのかなあ?
 コンビニから駅までダッシュしてきたからいい加減疲れております。 「まったくもう、、、こうやって走らせるんだから。」
「運動不足はドブスな証拠。 今から鍛えといたほうがいいですわよ。 お姉様。」 「あのねえ、きもいんだけど。」
「お前に可愛くされるほうがきもいんだけど。」 「何ですって? 可愛くされるときもいって?」
「そうだよ。 ホームの真ん中でいきなり泣き出すし怒り出すしメロドラマみたいなことやるし、俺はどうすりゃいいんだよ?」 「可愛がってりゃいいのよ。」
「勝手なやつだなあ。 俺の身にもなってくれよ。」 「いいじゃんいいじゃん。 また美味しい魚をあげるから。」
「俺は猫じゃないぞ。」 「猫みたいじゃない。 あはははは。」